犬の耳の病気と掃除方法|外耳炎から耳ダニまで

犬のケア

犬の耳の病気と掃除方法|外耳炎から耳ダニまで

🐕 この記事でわかること
犬の耳トラブルは、飼い主さんが直面する最も一般的な健康問題の一つです。外耳炎、中耳炎、内耳炎、耳ダニなど、放置すると深刻化する耳の病気から、正しい耳掃除の方法、垂れ耳・立ち耳犬種別の注意点まで、獣医師監修のもと詳しく解説します。

犬に多い耳の病気4選【重症度別】

犬の耳の病気は、炎症が起こる場所によって症状や治療法が大きく異なります。早期発見・早期治療が重要です。

【重症度★☆☆】外耳炎(がいじえん)

📍 炎症部位

耳の入り口から鼓膜までの「外耳道」に起こる炎症。犬の耳の病気で最も一般的です。

🩺 主な症状

  • 耳を頻繁に掻く、後ろ足でかきむしる
  • 頭を繰り返し振る(ブルブルッとする)
  • 耳から悪臭がする(酸っぱい臭い、甘い臭い)
  • 耳垢が増える(黄色・茶色・黒色)
  • 耳の内側が赤く腫れている
  • 耳を触られるのを嫌がる、痛がる

🔍 原因

  • 細菌・真菌(カビ)の繁殖:マラセチアなど
  • 耳ダニの寄生:ミミヒゼンダニ
  • アレルギー性皮膚炎:食物・環境アレルゲン
  • 耳掃除のやりすぎ:耳道内の傷
  • 水が耳に入る:シャンプー後の蒸れ
  • 異物混入:草の種、ゴミなど

💊 治療方法

動物病院での耳洗浄+点耳薬(抗生物質・抗真菌薬・ステロイド)が基本。治療期間は2〜4週間が目安です。重度の場合は内服薬も併用します。

【重症度★★☆】中耳炎(ちゅうじえん)

📍 炎症部位

鼓膜の奥にある「中耳」に起こる炎症。多くは外耳炎の悪化によって発症します。

🩺 主な症状

  • 外耳炎の症状に加えて神経症状が出現
  • 顔面神経麻痺:片側の顔が動かない、まばたきできない
  • ホルネル症候群:瞳孔の大きさが左右で違う、まぶたが垂れる
  • 耳を触ると激しく痛がる
  • 耳からの膿性の分泌物(耳だれ)

💊 治療方法

長期間の抗生物質投与(4〜6週間以上)が必要です。CT検査やMRI検査で炎症の範囲を確認し、場合によっては外科手術(鼓室切開術)も検討します。

【重症度★★★】内耳炎(ないじえん)

📍 炎症部位

平衡感覚や聴覚を司る「内耳」に起こる炎症。中耳炎が悪化すると発症し、最も深刻な状態です。

🩺 主な症状

  • 斜頸(しゃけい):頭が斜めに傾いて戻らない
  • 眼振(がんしん):黒目が左右に細かく揺れる
  • 旋回(せんかい):同じ方向にぐるぐる回る
  • 運動失調:立てない、歩けない、すぐ倒れる
  • 嘔吐・食欲不振:平衡感覚の喪失による
  • 難聴:呼んでも反応しない

💊 治療方法

6〜8週間以上の長期治療が必要です。抗生物質・消炎剤の内服に加え、MRI検査で状態を確認。改善が見られない場合は外科手術も検討します。完全に元に戻らないケースもあります。

【寄生虫】耳ダニ症(みみだにしょう)

📍 原因

ミミヒゼンダニという寄生虫が耳の中に住みつく病気。子犬や保護犬に多く見られます。

🩺 主な症状

  • 強烈なかゆみ:後ろ足で激しく掻く
  • 黒い耳垢:コーヒーかす状、乾燥した黒い塊
  • 頭を繰り返し振る
  • 耳の内側に血のかさぶた(掻き壊し)
  • 耳から悪臭がする

🔍 診断方法

耳垢を採取して顕微鏡検査でダニの成虫や卵を確認します。ビデオオトスコープで観察すると、白く動く虫体が見えることもあります。

💊 治療方法

動物病院で耳洗浄+駆除薬の投与を行います。駆除薬は2週間に1回、2〜3回の投与で完治します。代表的な薬はレボリューション(セラメクチン)などのスポットタイプです。

🛡️ 予防方法

月1回のノミ・ダニ予防薬が有効です。多頭飼いの場合、感染犬が使ったタオルやブラシは消毒しましょう。

外耳炎・中耳炎・内耳炎の進行イメージ

段階 病名 主な症状 治療期間
初期 外耳炎 かゆみ、耳垢増加、臭い 2〜4週間
中期 中耳炎 +神経症状(顔面麻痺など) 4〜6週間以上
重症 内耳炎 +平衡感覚喪失(斜頸、眼振) 6〜8週間以上

⚠️ 重要な注意点
外耳炎を放置すると中耳炎→内耳炎へと悪化し、治療期間が長引きます。「耳を掻く」「頭を振る」などの初期症状を見逃さず、早めに動物病院を受診しましょう!

犬種別:耳の病気リスク【垂れ耳vs立ち耳】

犬の耳の形は、「立ち耳」「半立ち耳」「垂れ耳」の3種類に分類されます。耳の形によって病気のリスクが異なります。

耳の形 代表的な犬種 耳病リスク 理由
垂れ耳 ゴールデンレトリーバー、コッカースパニエル、トイプードル、ビーグル、ダックスフンド ⭐⭐⭐ 耳が塞がれて通気性が悪い。湿気がこもり細菌繁殖しやすい
半立ち耳 ボーダーコリー、ジャックラッセルテリア、パグ、シェットランドシープドッグ ⭐⭐☆ 垂れ耳ほどではないが、先端が折れているためやや蒸れやすい
立ち耳 柴犬、秋田犬、チワワ、ポメラニアン、ジャーマンシェパード、シベリアンハスキー ⭐☆☆ 耳が開いていて通気性良好。耳垢も溜まりにくい

💡 垂れ耳犬種の飼い主さんへ
垂れ耳の犬は外耳炎の発症率が立ち耳の約3倍と言われています。特にトイプードルやシーズーなど、耳の穴の入り口に毛が密集している犬種は、トリミングで耳毛を抜いてもらい、衛生的な環境を保ちましょう。

正しい耳掃除の方法【3ステップ】

犬の耳には自浄作用(汚れを外に押し出す力)があるため、実は頻繁な耳掃除は不要です。むしろやりすぎると耳を傷つけ、炎症の原因になります。

📅 耳掃除の適切な頻度

  • 汚れチェック:週1回
  • 耳掃除(軽く拭く):月1〜2回
  • 垂れ耳犬種:2週間に1回
  • 汚れがない場合:無理に掃除しない

【STEP 1】準備するもの

  • イヤークリーナー(犬用耳掃除専用液)
  • コットン・ガーゼ(柔らかい素材)
  • ご褒美用のおやつ

【STEP 2】耳掃除の手順

  1. 耳介(外側のヒダ部分)を優しく拭く
    イヤークリーナーを染み込ませたコットンで、見える範囲だけを拭きます。奥まで入れないこと!
  2. 耳道内の掃除(液体洗浄)
    イヤークリーナーを耳の穴に数滴垂らし、耳の付け根を優しくマッサージ。クチュクチュ音がするまで揉みます。
  3. 頭を振らせて汚れを出す
    犬が自然に頭を振って、汚れが外に飛び出します。その後、出てきた汚れをコットンで拭き取ります。

【STEP 3】ご褒美を与える

耳掃除後は必ずおやつを与えて褒めることで、「耳掃除=良いこと」と学習させます。嫌がる子も徐々に慣れてきます。

耳掃除のNG行為【絶対やってはいけないこと】

NG行為 危険性
❌ 綿棒を使う 耳垢を奥に押し込む。鼓膜を傷つけるリスク大
❌ 耳かきを使う 耳道を傷つける。外耳炎の原因に
❌ アルコールティッシュ 皮膚を刺激。炎症を悪化させる
❌ 水で洗う 水分が残って蒸れる。細菌繁殖の温床に
❌ 毎日掃除する やりすぎは逆効果。常在菌バランスが崩れる

⚠️ こんな時は動物病院へ!
耳が赤く腫れている、悪臭が強い、耳だれが出ている、激しく痛がる場合は、自宅での耳掃除は絶対にNG!すぐに動物病院を受診してください。

よくある質問Q&A

Q1. 外耳炎は自然に治りますか?

A. 軽度の外耳炎は自然治癒することもありますが、ほとんどは治療が必要です。放置すると中耳炎や慢性化のリスクが高まります。「耳を掻く」「臭いがする」などの症状が2〜3日続いたら、動物病院を受診しましょう。

Q2. 耳ダニは人間にうつりますか?

A. 犬の耳ダニ(ミミヒゼンダニ)は人間には感染しません。ただし、他の犬や猫には感染するため、多頭飼いの場合は全頭の治療が必要です。

Q3. 耳掃除を嫌がる場合の対処法は?

A. まずは1〜2分の短時間から始め、耳を触るだけでも褒めておやつを与えます。徐々に慣れさせることが大切です。どうしても嫌がる場合は、動物病院やトリミングサロンでプロに任せるのも良い選択です。

Q4. 耳垢の色で病気がわかりますか?

A. はい、ある程度判断できます。
・黄色〜茶色の耳垢:正常または軽度の外耳炎
・黒くて乾燥:耳ダニの可能性大
・茶色で湿っている:マラセチア(真菌)感染
・黄緑色で膿状:細菌感染(重度の外耳炎・中耳炎)

Q5. シャンプー後の耳ケアはどうすればいい?

A. シャンプー後は必ず耳の水分を拭き取ることが重要です。コットンで優しく拭いた後、イヤークリーナーを数滴垂らして頭を振らせると、残った水分も一緒に出てきます。耳栓やコットンを詰めての予防も効果的です。

まとめ:早期発見・早期治療が最重要

犬の耳の病気は、外耳炎→中耳炎→内耳炎と段階的に悪化します。初期段階で発見できれば短期間で治りますが、放置すると治療期間が長引き、完治が難しくなります。

🎯 この記事の重要ポイント

  • 外耳炎・中耳炎・内耳炎は放置すると進行する
  • 耳ダニは黒い耳垢が特徴、2〜3回の治療で完治
  • 垂れ耳犬種は外耳炎リスクが約3倍高い
  • 耳掃除は月1〜2回、見える範囲だけでOK
  • 綿棒・耳かき・アルコールはNG
  • 「耳を掻く」「頭を振る」は耳トラブルのサイン
  • 週1回の耳チェック習慣が早期発見の鍵

愛犬の耳を守るには、日常的な観察と適切なケアが欠かせません。週1回は耳の状態をチェックし、異常を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。特に垂れ耳犬種の飼い主さんは、トリミング時に耳毛のカットや耳洗浄もお願いすると安心です!


参考文献

  1. 保険比較「犬の外耳炎の症状・原因と治療法について獣医師が解説」
    https://hoken.kakaku.com/pet/dog_injuries/ear/gaijien/
  2. アニコム損保「耳が臭うのは外耳炎かも。症状や治療法を解説」
    https://www.anicom-sompo.co.jp/inu/1566.html
  3. ペットファミリー「犬の耳ダニってなに?症状や予防、治療法を解説」
    https://www.petfamilyins.co.jp/pns/article/pfs202208e/
  4. みんなのブリーダー「犬の耳掃除は自宅でできる?やり方や注意点を解説」
    https://www.min-breeder.com/magazine/15201
  5. アニコム損保「中耳炎・内耳炎<犬>」
    http://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/870
  6. エリエール「愛犬の耳掃除は必要?頻度の目安や手順、注意点を解説」
    https://www.elleair.jp/kimiomoi/article/useful/203482/
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