犬の糖尿病の症状と食事管理|インスリン注射と血糖値コントロール
「最近、水を飲む量が増えた」「食欲はあるのに痩せてきた」――それは犬の糖尿病の初期サインかもしれません。この記事では、症状の見分け方から診断、インスリン注射の実際、食事療法、血糖値モニタリング、合併症対策まで、獣医師監修相当の情報を体系的にまとめます。
【重要】薬機法・景品表示法に関する注意
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。「治る」「完治する」等の断定表現は避け、療法食や測定器も「効果が保証される」ものではありません。症状がある場合は必ず獣医師にご相談ください。
犬の糖尿病とは?(基礎知識)
犬の糖尿病は、インスリンの不足または作用不全により血糖値が慢性的に高くなる内分泌疾患です。人間の糖尿病と同様に、完治は難しく生涯にわたる管理が必要になります。
- インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖を細胞に取り込む役割を担います
- インスリンが不足すると、血液中の糖(ブドウ糖)が増え、細胞はエネルギー不足に陥ります
- 犬の糖尿病は主に「インスリン依存型(1型に近い)」で、インスリン注射が必須です
- 中高齢(7歳以上)、避妊していないメス、肥満犬、特定犬種(ミニチュア・シュナウザー、プードル等)がリスク要因です
初期症状と見分け方(多飲多尿・体重減少)
典型的な初期症状(4つのP)
Polydipsia(多飲)
水を異常に飲む。水入れがすぐ空になる、1日の飲水量が明らかに増えた。
Polyuria(多尿)
尿の量・回数が増える。散歩中に何度もトイレ、夜中にトイレを求める、尿のにおいが薄い。
Polyphagia(多食)
食欲が旺盛。いつもより食べるのに、体重が減っていく。
Weight loss(体重減少)
食べているのに痩せる。細胞がエネルギーを使えず、筋肉・脂肪を分解してしまうため。
「多飲多尿+体重減少」の組み合わせは、糖尿病の最も典型的なサインです。この3つが揃ったら、早めに動物病院へ。
進行すると現れる症状
- 元気がない、ぐったりしている
- 嘔吐、下痢
- 脱水(皮膚の弾力低下)
- 口臭(甘酸っぱい、フルーツのようなにおい)← ケトアシドーシスのサイン
- 白内障(目が白濁)
ケトアシドーシスは命に関わる緊急事態です。すぐに受診してください。
診断方法(血液検査・尿検査・フルクトサミン)
A. 血液検査
血糖値測定
空腹時血糖値が150~200mg/dL以上が糖尿病の疑い(正常は50~100mg/dL)。ただし、興奮やストレスでも血糖値は上がるため、1回の高値だけでは確定しません。
フルクトサミン・糖化アルブミン
過去1~2週間の平均血糖値を反映する指標。一時的な血糖変動に左右されないため、診断の精度が上がります。
B. 尿検査
尿糖(+):血糖値が高いと、腎臓が糖を排泄しきれず尿に糖が出ます。
尿ケトン体(+/-):ケトアシドーシスの判定に重要。
C. 診断の流れ
- 臨床症状の確認(多飲多尿・体重減少)
- 血液検査(血糖値・フルクトサミン)
- 尿検査(尿糖・尿ケトン体)
- 持続的な高血糖と尿糖が確認されれば糖尿病と診断
インスリン注射の実際(投与方法・回数・タイミング)
A. インスリン注射の基本
- インスリンは皮下注射で投与します(背中や首の後ろなど、皮膚がつまみやすい場所)
- 一般的に1日1~2回、毎日決まった時間に注射
- 食事の直前または直後に投与するのが基本
- 飼い主さんが自宅で注射できるよう、獣医師が指導します
B. 初回投与量と調整
初回推奨投与量は体重1kgあたり0.5~1.0単位を1日1回または2回。数日間入院して血糖値の変化を観察し、適切な投与量を決定します。その後は自宅で継続し、定期的に動物病院で血糖値をチェックして微調整します。
C. インスリンの種類
| 製剤名 | 作用時間 | 投与回数 | 補足 |
|---|---|---|---|
| プロジンク(犬用) | 中間型 | 1日1~2回 | 犬用として承認されているインスリン製剤 |
| レベミル(人用) | 持効型 | 1日1~2回 | 一部の獣医師が使用(オフラベル) |
注射のトラブル対処
- 注射を打ち忘れた場合:次の予定時刻まで待ち、通常量を投与(2回分を一度に打たない)
- 低血糖(ぐったり、ふらつき、けいれん)が出た場合:蜂蜜やシロップを口に塗り、すぐ受診
食事療法のポイント(療法食・低GI・炭水化物管理)
A. 食事療法の3原則
規則正しい食事時間
インスリン注射と食事のタイミングを毎日一定にします(例:朝7時・夜7時)。食事量も一定に保ちます。
低GI・高食物繊維
血糖値の急上昇を抑えるため、低GI(グリセミック・インデックス)の炭水化物と食物繊維を重視します。
高タンパク質・適度な脂質
筋肉を維持するため、良質なタンパク質を確保。脂質は肥満予防のため適量に抑えます。
B. 糖尿病対応療法食
獣医師が推奨する糖尿病対応療法食は、低GI炭水化物(大麦・オーツ麦・サツマイモ等)と食物繊維を配合し、血糖値の安定を助けます。代表的な療法食:
- ロイヤルカナン 糖コントロール
- ヒルズ プリスクリプション・ダイエット w/d(消化・体重・糖尿病管理)
※療法食は「治療」ではなく「管理の補助」です。必ず獣医師の指示に従ってください。
C. 手作り食の注意点
手作り食を検討する場合は、低GI食材(ひよこ豆・サツマイモ・ブロッコリー等)を使い、栄養バランスを崩さないよう獣医師や栄養士に相談しましょう。白米・じゃがいもは血糖値を上げやすいため控えめに。
血糖値モニタリング(自宅測定・持続血糖測定器)
A. 自宅での血糖値測定
動物病院でのチェックだけでは、日々の血糖値変動を把握しきれません。自宅で血糖値を測定することで、インスリンの効き具合や低血糖のリスクを早期に察知できます。
- ペット用血糖値測定器(VetMate、アルファトラック3等)を使用
- 耳介(耳の縁)や肉球から微量採血して測定
- 測定頻度は獣医師の指示に従う(例:週1回、インスリン調整時は毎日等)
B. 持続血糖測定器(CGM)
人間用のフリースタイルリブレを犬に応用するケースも増えています。センサーを皮下に装着し、リーダーをかざすだけで血糖値を測定できます。
- 採血不要で、ストレスが少ない
- 24時間の血糖変動を記録できる
- 獣医師に相談してから導入を検討しましょう
※人間用医療機器を動物に使用するのは「オフラベル使用」となります。獣医師の指導のもとで使用してください。
合併症と予後(白内障・ケトアシドーシス)
A. 糖尿病性白内障
犬の糖尿病で最も多い合併症。高血糖が続くと、水晶体に糖が蓄積し白濁します。進行は非常に早く、数週間で失明することも。
- 症状:目が白く濁る、物にぶつかる、視力低下
- 治療:外科手術(水晶体摘出)が唯一の治療法。早期発見が重要
B. 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
【緊急】命に関わる急性合併症
インスリンが極端に不足すると、体が脂肪を分解してエネルギーを得ようとし、ケトン体が大量に発生。血液が酸性に傾き、昏睡や死に至ります。
- 症状:元気消失、嘔吐、下痢、脱水、甘酸っぱい口臭、ぐったり、昏睡
- 対処:すぐに動物病院へ。集中治療(点滴・インスリン投与)が必要
C. その他の合併症
- 慢性腎臓病
- 感染症(膀胱炎・皮膚炎)
- 肝臓疾患
- 神経障害
D. 予後
適切な治療と管理ができれば、犬の糖尿病は長期にわたってQOL(生活の質)を維持できます。ただし、完治は難しく、生涯にわたるインスリン投与と食事管理が必要です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
療法食・血糖測定器の選び方(Amazon中心)
A. 糖尿病対応療法食
療法食の選び方(景品表示法・薬機法に配慮)
- 「治る」「完治する」等の効果は保証されません。あくまで血糖値管理の補助です
- 獣医師の指示に従い、定期的に血糖値をチェックしながら使用します
- 療法食は「処方食」とも呼ばれ、動物病院で購入するのが基本ですが、Amazon等でも入手可能です
B. 血糖値測定器
ペット用血糖値測定器の選び方
- ペット用に調整された測定器(VetMate、アルファトラック3、iPet等)を選ぶ
- 人間用測定器は犬の血糖値を正確に測れないことがあります
- 測定器本体+テストストリップ(消耗品)がセットになったスターターキットがおすすめ
- 獣医師に使い方を教わってから使用しましょう
※測定器や療法食は「診断・治療」を行うものではありません。必ず獣医師の指導のもとで使用してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 犬の糖尿病は完治しますか?
残念ながら、犬の糖尿病は完治しません。生涯にわたってインスリン投与と食事管理が必要です。ただし、適切な治療で長期間QOLを維持できます。
Q2. インスリンを打ち忘れたらどうなりますか?
1回の打ち忘れで即座に危険な状態になることは少ないですが、次の予定時刻まで待ち、通常量を投与してください。2回分をまとめて打つのは厳禁(低血糖のリスク)。頻繁に忘れると血糖値が不安定になります。
Q3. 糖尿病の犬におやつは与えていいですか?
血糖値を急上昇させないおやつなら少量OK。低糖質・高タンパク質のおやつ(茹でた鶏肉・野菜スティック等)を選び、1日の総カロリーに含めて管理します。獣医師に相談を。
Q4. 糖尿病の犬の寿命はどれくらいですか?
適切な治療を受ければ、診断後も数年以上生存する犬は珍しくありません。早期発見・合併症の予防・定期的なモニタリングが鍵です。
Q5. 人間用のインスリンや測定器は使えますか?
一部の人間用インスリン(レベミル等)を獣医師がオフラベル使用するケースはありますが、自己判断で使用しないでください。人間用血糖値測定器は犬の血液で正確に測れないことがあるため、ペット用測定器を推奨します。
獣医師に確認したいポイント
この記事を読んで「うちの子は糖尿病かも?」と感じたら、次の質問をメモして獣医師に意見をもらうと診断がスムーズです。
- 多飲多尿・体重減少の症状がどれくらい続いているか
- 血液検査・尿検査の結果の見方(血糖値・フルクトサミン・尿糖)
- インスリン注射の種類・投与量・投与タイミング
- 療法食の選び方と切り替え方
- 自宅での血糖値測定の頻度と記録方法
- 低血糖のサインと緊急時の対処法
- 白内障やケトアシドーシスのリスクと早期発見のコツ
※糖尿病は長期管理が必要な病気です。獣医師と信頼関係を築き、定期的に相談しながら進めましょう。
参考文献
本文作成の参考にした公開情報(URL)です。
- https://www.keikoku-ah.com/blog/4496
- https://kuwabara-ah.jp/topics/111/
- https://reiwa-animal-hospital.com/2022/11/14/%E7%8A%AC%E3%81%AE%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F/
- https://hayashivet.com/news/post/895/
- https://iris-vethosp.com/column/dog-cat-diabetes/
- https://arkraythinkanimal.com/2020/06/15/sh79/
- https://arkraythinkanimal.com/2019/12/03/sh66/
- https://www.adr-matsuki-ah.com/case/3364/
- https://www.halu.vet/3751-2/
- https://www.chayagasaka-ah.jp/media/dog/disease/493/
- https://hirai-vet.com/blog_articles/diabetes_dog.html
- http://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1441

