愛犬が顔や耳を頻繁に掻いている、皮膚が赤くなっている、下痢が続いている……。その症状、もしかすると食物アレルギーが原因かもしれません。食物アレルギーは犬にとって非常に身近な疾患であり、適切なフード選びと食事管理が症状改善の鍵となります。本記事では、食物アレルギー対応フードの選び方、除去食試験のやり方、そしてローテーション食事法の実践方法について、獣医学的な根拠をもとに詳しく解説します。
📋 目次
🔬 食物アレルギーとは?原因と症状
🧬 食物アレルギーのメカニズム
食物アレルギーは、食事に含まれる特定のタンパク質を犬の免疫システムが「異物」と誤認し、過剰な免疫反応を起こす状態です。特に動物性タンパク質(牛肉、鶏肉、乳製品)や植物性タンパク質(小麦、大豆、とうもろこし)がアレルゲンとなりやすいとされています。(ピースワンコ・ジャパン)
🩺 主な症状
- 皮膚症状: かゆみ、赤み、発疹、顔や耳・内股・足先の掻き壊し
- 消化器症状: 下痢、嘔吐、軟便、排便回数の増加
- その他: 目の充血、外耳炎、顔の腫れ
症状だけでは他の皮膚炎と区別しにくいため、確定診断には除去食試験または血液検査(IgE検査、リンパ球反応検査)が必要です。(FANCL)
🥫 食物アレルギー対応フードの種類と選び方
① 加水分解タンパク質フード
タンパク質を酵素で細かく分解し、免疫システムがアレルゲンとして認識できない状態にしたフードです。アレルギー反応をほぼ引き起こさないため、重度のアレルギーや複数のアレルゲンを持つ犬に適しています。(メゾン・ド・ジビエ)
💡 代表製品: ロイヤルカナン アミノペプチドフォーミュラ、ヒルズ z/d
② 新奇タンパク質フード
犬がこれまで食べたことのない、または食べる機会が少なかったタンパク源(鹿肉、馬肉、魚、ラム肉、カンガルー肉など)を使用したフードです。既知のアレルゲンを避けつつ、必要な栄養を摂取できます。(GREEN DOG)
③ 限定原材料フード(リミテッドイングリーディエント)
使用する食材を最小限に抑え、アレルゲン混入のリスクを減らしたフードです。「単一タンパク源+単一炭水化物源」の組み合わせが基本です。
⚠️ 選び方のポイント
- これまで食べていないタンパク源を選ぶ(過去のフード履歴を確認)
- 無添加・保存料不使用のものを優先
- 獣医師の推奨する療法食を検討
- 原材料表示を細かくチェックし、アレルゲンの混入がないか確認
🔍 除去食試験のやり方と成功のポイント
除去食試験は、食物アレルギーの最も確実な診断方法です。成功率は80%以上とされ、アレルゲンの特定に有効です。(医療ペコ)
📅 実施方法と期間
- Step 1: 準備期間
獣医師と相談し、新奇タンパク質フードまたは加水分解フードを選定 - Step 2: 除去期間(8〜12週間)
選定したフードのみを与え、おやつ・人間の食べ物・サプリメントは完全に禁止。この期間で症状が改善すれば食物アレルギーの可能性が高い。(動物の病院くすめ) - Step 3: 負荷試験(1〜2週間)
元のフードを少しずつ与え、症状が再発するかを確認。再発すれば食物アレルギーと確定診断
⚠️ 成功のための注意点
- 家族全員が徹底してルールを守る(子供が隠れておやつをあげないよう注意)
- 散歩中の拾い食いを防ぐ
- 歯磨きガムやフレーバー付き薬もNG
- 期間中は1週間ごとに症状の変化を記録する
🔄 ローテーション食事法の実践方法
ローテーション食事法とは、複数種類のドッグフードを定期的に切り替える食事管理方法です。同じタンパク源を長期間与え続けることで生じる「新たなアレルギー発症」を予防し、栄養バランスの偏りを防ぐ効果があります。(いぬなび)
🎯 ローテーションのメリット
- 食物アレルギーの予防: 同一タンパク源の過剰摂取を避ける
- 栄養バランスの向上: 多様な食材から異なる栄養素を摂取
- 食べ飽き防止: 味の変化で食いつきを維持
- 万が一の備え: 複数フードに慣れておくことで、災害時や療法食への移行がスムーズ
📆 ローテーションの実施方法
基本的なローテーション周期: 2〜3ヶ月ごとにフードを切り替えるのが一般的です。頻繁すぎる切り替えは胃腸に負担をかけるため、最低でも8週間は同じフードを継続しましょう。(POCHI)
💡 ローテーション例
- 1〜3ヶ月目: ラム肉ベースのフード
- 4〜6ヶ月目: サーモン(魚)ベースのフード
- 7〜9ヶ月目: 鹿肉ベースのフード
- 10〜12ヶ月目: 豚肉ベースのフード
※切り替え時は1週間かけて徐々に新しいフードの割合を増やし、胃腸への負担を軽減します。
⚠️ ローテーションの注意点
- 消化器が敏感な犬は下痢や軟便を起こしやすいため、ゆっくり切り替える
- すでにアレルギーが判明している食材は絶対に避ける
- コストがかかるため、予算を考慮して計画を立てる
⚠️ 主なアレルゲン食材と新奇タンパク質
🚫 アレルギーを起こしやすい食材TOP5
犬の食物アレルギーで最も一般的な原因物質は以下の通りです。(犬心)
- 牛肉 – 最もアレルギーを引き起こしやすい
- 乳製品
- 小麦
- 鶏肉
- 卵、ラム肉、大豆
これら5つで全体の約70〜95%を占めます。(まっさんのドッグフード研究所)
✅ 低アレルゲン食材(新奇タンパク質)
- 鹿肉(ベニソン): 高タンパク・低脂肪、自然飼育でアレルギーリスク低
- 馬肉: 胃腸が弱い馬は添加物を食べにくく、低アレルゲン
- 魚(サーモン、タラ): オメガ3脂肪酸が豊富で皮膚の健康にも良い
- ラム肉: 消化しやすく、比較的アレルギー反応が少ない
- カンガルー肉、うさぎ肉、ダチョウ肉: 非常に珍しいため新奇タンパク質として有効
※ただし、近年は魚や馬肉、鹿肉、ラム肉もドッグフードで広く使われるようになり、これらにアレルギーを持つ犬も増えています。(ペット保険「ホット」)
🌾 グレインフリーフードの選び方
グレインフリー(穀物不使用)フードは、小麦・とうもろこし・大豆などの穀物を使用せず、穀物アレルギーを持つ犬に適しています。ただし、穀物よりも動物性タンパク質(牛肉・鶏肉)の方がアレルゲンになりやすいことが研究で明らかになっています。(京もご馳走)
🌾 グレインフリーが適している場合
- 小麦・とうもろこし・大豆アレルギーが確認されている
- グルテン不耐症を持つ犬種(アイリッシュ・セッター、ボーダーコリーなど)
- 穀物の消化が苦手な犬
💡 選び方のポイント
- 穀物の代わりに豆類(えんどう豆、ひよこ豆)や芋類(サツマイモ)が使われている
- 高タンパクになりやすいため、肝臓・腎臓に負担がかかる場合がある
- 一般的なフードより価格が高い傾向にある
※グレインフリーが全ての犬に適しているわけではありません。穀物は消化可能なエネルギー源であり、全粒穀物にはビタミンEやリノール酸などの重要な栄養素も含まれています。(ヒルズ)
🏆 おすすめアレルギー対応フードの特徴
| フードタイプ | 特徴 | 適している犬 |
|---|---|---|
| 加水分解タンパク質フード | タンパク質を細かく分解しアレルギー反応を起こしにくい | 重度アレルギー、複数アレルゲン保有 |
| 新奇タンパク質フード | 鹿肉・馬肉・魚など食べたことのないタンパク源 | アレルゲン特定済み、予防目的 |
| 限定原材料フード | 使用食材を最小限に抑え混入リスク低減 | 軽度〜中度アレルギー |
| グレインフリーフード | 穀物を一切使用しない | 穀物アレルギー、グルテン不耐症 |
💡 代表的な療法食ブランド
- ロイヤルカナン ベテリナリーダイエット: アミノペプチドフォーミュラ、セレクトスキンケア
- ヒルズ プリスクリプション・ダイエット: z/d、d/d
- ナチュラルバランス: ポテト&ダック、リミテッドイングリーディエント
✅ まとめ
- 食物アレルギーの確定診断には除去食試験(8〜12週間)が最も有効
- フード選びは「加水分解タンパク質」「新奇タンパク質」「限定原材料」が基本
- ローテーション食事法は2〜3ヶ月周期で実施し、新たなアレルギー発症を予防
- 主なアレルゲンは牛肉・乳製品・小麦・鶏肉。低アレルゲン食材は鹿肉・馬肉・魚
- グレインフリーは穀物アレルギーには有効だが、全ての犬に必要なわけではない
- フード切り替え時は必ず1週間かけて徐々に行い、胃腸への負担を軽減する
⚠️ 必ず獣医師にご相談ください
食物アレルギーの診断と治療には専門的な知識が必要です。自己判断でフードを変更すると、症状が悪化したり、栄養不足を引き起こす可能性があります。本記事の情報を参考にしつつも、必ず動物病院でアレルギー検査や除去食試験を受け、獣医師の指導のもとで適切な食事管理を行ってください。特に除去食試験中は、獣医師の処方する療法食を使用し、定期的に診察を受けることが成功の鍵となります。
📚 参考文献
- 犬の食物アレルギーとは?原因や症状、診断法、治療法を解説 – FANCL
- 【保存版】犬の食物アレルギーの検査と診断の流れとは? – ルアナ動物病院
- 愛犬のかゆみは食べ物が原因?犬の食物アレルギーの原因や症状 – ピースワンコ・ジャパン
- 犬の食物アレルギーを理解する:診断と治療ガイド – 医療ペコ
- 犬のアレルギー対策にいま選びたいドッグフードとは?失敗しない選び方 – メゾン・ド・ジビエ
- アレルギー対策のドッグフード11選【獣医師監修】- コスモス動物病院
- 食物アレルギー療法食の選び方 [PDF] – あきやま動物病院
- 犬の食物アレルギーの食事【獣医師解説】~犬が病気の時の食事④ – ワンペディア
- 【獣医師監修】ドッグフードローテーションって必要?メリット・デメリット – いぬなび
- 犬のフードローテーション方法とメリット|効果・注意点・始め方 – PetsCare.com
- ドッグフードのフードローテーションは必要?メリットと実践方法 – アップルドッグ
- ドッグフードのローテーションの疑問。いつから?方法は?選び方は? – POCHI
- 除去食試験 – 動物の病院くすめ
- 犬の除去食試験について 〜食物アレルギーを見つけるための検査 – マリン動物病院
- 【獣医師監修】食物アレルギーに悩む犬にオススメの新奇タンパク質とは? – GREEN DOG
- アレルギーへの対策(犬心) – 犬心
- 【獣医師監修】犬の食べ物アレルギーの原因や症状 – ペット保険「ホット」
- 犬のアレルギーに多い原因食材とは?対策フードと検査方法も紹介 – 京もご馳走
- グレインフリー(穀物不使用)のドッグフードについて知っておきたいこと – ヒルズ

