「いざという時、うちの子のごはんは何日分あれば安心なんだろう」——災害のニュースを見るたびに、そんな不安がよぎる飼い主さんは多いのではないでしょうか。フードの備蓄は「たくさんあれば安心」という単純な話ではなく、日数の目安・必要量の計算方法・賞味期限切れを防ぐ回し方をセットで知っておくことが大切です。この記事では環境省のガイドラインなどをもとにした推奨日数、体重別の必要量の考え方、そして無理なく続けられるローリングストックの手順まで、実践しやすい形でまとめました。

犬のフード備蓄、なぜ「多め」が必要なのか
災害時、水や食料の支援物資は人命優先で配られるため、ペット用品は後回しになりやすいのが実情です。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」でも、ペットのフードと水は少なくとも5日分、できれば7日分以上を備えておくことが推奨されています。さらに、過去の災害では支援物資が届くまでに数週間〜半年以上かかった地域もあり、自宅での備蓄(ローリングストック)としてはより長い期間を見込んでおくと安心です。
つまり「避難時に持ち出す分」と「自宅に置いておく日常の備蓄」は、必要な日数の考え方が少し異なります。この違いを整理しておくと、無理なく備えを進めやすくなります。
推奨される備蓄日数の目安
| 備蓄の種類 | 目安日数 | ポイント |
|---|---|---|
| 非常持ち出し袋(避難時に持って逃げる分) | 3〜5日分 | 密閉容器や小分け袋に入れて軽量化しておく |
| 自宅の日常備蓄(ローリングストック分) | 1週間〜1ヶ月分 | 支援物資到着の遅れを見込み、できれば長めが安心 |
| 療法食・処方フード | 1〜2週間分以上 | 動物病院でしか手に入らないため特に余裕を持たせる |
| 常備薬(持病がある場合) | 1〜2週間分 | かかりつけ医と相談し多めに処方してもらう |
住んでいる地域の災害リスクや家族構成によっても必要な備えは変わります。マンションか一戸建てか、車で避難できるかどうかなど、自分たちの状況に合わせて日数を調整してみてください。

体重別・必要なフード量の計算方法
備蓄量を決めるには、まず愛犬が1日に必要とするエネルギー量(DER:1日必要エネルギー量)を知ることが第一歩です。一般的に使われる計算式は次のとおりです。
DER(kcal/日)=70×理想体重(kg)の0.75乗×活動係数
活動係数は成犬・避妊去勢済みでおよそ1.6、成長期の子犬は2.0〜3.0、シニア犬や減量期は1.0〜1.4程度が目安とされています。体重が2倍になっても必要カロリーは単純に2倍にはならない点がポイントです。
| 体重の目安 | 1日の必要エネルギー量(成犬・活動係数1.6の場合) |
|---|---|
| 5kg(小型犬) | 約370kcal |
| 10kg(小〜中型犬) | 約630kcal |
| 20kg(中〜大型犬) | 約1060kcal |
| 30kg(大型犬) | 約1440kcal |
上記の数値はあくまで計算式にもとづく目安です。避妊去勢の有無・年齢・持病の有無などで変わるため、正確な数値はかかりつけの動物病院で確認するのが確実です。
必要なフードの重さは、次の式で求められます。
1日のフード量(g)=DER÷フード100gあたりのカロリー×100
例えば100gあたり350kcalのフードで10kgの成犬(DER約630kcal)の場合、1日あたり約180gが目安になります。この量に備蓄したい日数をかければ、必要な総量(g・kg)が算出できます。7日分なら約1.3kg、30日分なら約5.4kgという計算です。フードのパッケージに記載されているkcal/100gの数値を使って、愛犬のフードで実際に計算してみましょう。
療法食を与えている犬の備蓄で気をつけたいこと
腎臓病や食物アレルギーなどで療法食を与えている場合、災害時に同じフードを手に入れるのは非常に難しくなります。動物病院でしか処方されないタイプも多いため、一般的な備蓄日数よりも余裕を持たせ、1〜2週間分以上を目安に確保しておくと安心です。
- かかりつけ医に相談し、災害時用として多めに処方してもらえないか確認する
- 療法食の種類・給与量・切り替え理由をメモにまとめ、フードと一緒に保管しておく
- 可能であれば同系統の療法食を扱う複数の病院・通販ルートを事前に把握しておく
- 薬と同様に、消費期限の近いものから使うローリングストックを徹底する
ローリングストックの実践手順
「備蓄したはいいけれど賞味期限が切れていた」という失敗を防ぐのが、ローリングストックという考え方です。特別な保存食を買い込むのではなく、普段使っているフードを少し多めに買い置きし、日常的に消費しながら減った分を買い足していく方法です。
- 普段与えているフードを、1〜2袋分多く買っておく
- 新しく買ったものは棚の奥へ、古いものは手前に置いて先に使う「先入れ先出し」を徹底する
- 賞味期限が近づいてきたら通常の食事として消費し、減った分だけ買い足す
- 備蓄場所には日付を書いたメモやラベルを貼り、管理しやすくする
- 月に一度など、備蓄量と期限をまとめてチェックするタイミングを決めておく
長期保存専用のフードをゼロから備えるより、普段の食事に近い味・形状のフードを備蓄しておく方が、災害時のストレスで食欲が落ちた愛犬にも与えやすいというメリットもあります。ドライタイプだけでなくウェットタイプにも慣れさせておくと、支援物資として配布されるフードの形状が変わっても対応しやすくなります。

水の備蓄量とあわせて確認したいこと
フードと同様に、水も5日〜7日分以上を目安に備えておきたいアイテムです。断水時は人用の備蓄と共用できる場合もありますが、犬の体重や気温によって必要量は変わるため、フードと同じタイミングで残量を確認しておくと管理がしやすくなります。ミネラル分の多い水は尿路結石のリスクがある犬には向かない場合があるため、迷った場合はかかりつけの獣医師に確認しましょう。
保存のコツと注意点
- 開封後のフードは酸化が進みやすいため、密閉容器に移し替えて保存する
- 直射日光や高温多湿を避け、床下や窓際ではなく涼しい場所に置く
- 倉庫や収納の奥にしまい込むと存在を忘れがちなので、目につく場所にも一部を置いておく
- 持ち出し用は小分けにしてリュックにまとめ、いつでも運び出せる状態にしておく
- フードだけでなく、食器・計量カップ・ビニール袋も一緒に備えておくと災害時に慌てずに済む
備蓄・保存に役立つアイテム
ドッグフード定期便サービス
普段使っているフードを一定間隔で自動的に届けてくれるサービスです。買い忘れを防ぎながら、意識せずローリングストックの「補充」部分を仕組み化できます。
どんな人向け:買い置き管理が面倒で忘れがちな方、常に一定量のフードを切らしたくない方
参考価格:月額3,000円〜6,000円程度(フードの種類・量による)
フード保存容器(密閉タイプ)
開封後のフードを酸化や湿気、虫の混入から守る密閉容器です。パッキン付きでしっかり空気を遮断できるタイプなら、備蓄用の長期保管にも向いています。
どんな人向け:大袋フードを買っている方、備蓄フードの品質をできるだけ長く保ちたい方
参考価格:1,500円〜4,000円程度(容量による)
長期保存水(ペット用・人用兼用可)
数年単位で保存できる備蓄用の水です。フードの備蓄とあわせて用意しておくことで、断水時も愛犬の水分補給に対応できます。
どんな人向け:水道が止まるリスクに備えたい方、非常持ち出し袋を充実させたい方
参考価格:500mlあたり150円〜300円程度(本数・保存年数による)

まとめ
フードの備蓄は「非常持ち出し用に3〜5日分」「自宅のローリングストックとして1週間〜1ヶ月分」「療法食は1〜2週間分以上」という3段構えで考えると、無理なく準備を進めやすくなります。愛犬の体重や活動量から必要カロリーを計算し、普段のフードを少し多めに買い置きして日常的に消費・補充するローリングストックを習慣にしておけば、賞味期限切れの心配も減らせます。今日から少しずつ、無理のない範囲で備えを始めてみてください。
参考文献
- 環境省「ペットの災害対策」
- 空飛ぶ捜索医療団ARROWS「ペットの備蓄を用意しよう。備蓄品のチェックリストや便利グッズを紹介」
- ペピイ「【犬の防災】非常持ち出し袋の中身は?フード・水は何日分?」
- 政府広報オンライン「今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方」
- リッチェルLIFE+「災害時に犬に必要な物リストと備蓄のコツ」
- 日本動物医療センター「ペットの1日フード量計算(犬・猫)」
免責事項
本記事で紹介したカロリー・フード量の計算はあくまで一般的な目安であり、すべての犬に当てはまるものではありません。持病の有無、年齢、体調によって必要な量は異なりますので、正確な給与量や療法食の管理については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
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