本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりにはなりません。愛犬の乳腺にしこりを発見した場合は、速やかに獣医師の診察を受けてください。
「お腹をなでていたらしこりを見つけた…」「これって乳腺腫瘍?良性?悪性?」そんな不安を持つ飼い主さんは少なくありません。
犬の乳腺腫瘍はメス犬に最もよく見られる腫瘍のひとつで、良性・悪性の割合はおよそ50:50。悪性の場合は転移・死亡のリスクも高く、早期発見・早期手術が完治への最短ルートです。
この記事では、乳腺腫瘍の症状・見分け方・手術の種類・費用・予防法・術後ケアまでをわかりやすく解説します。
乳腺腫瘍が悪性の割合
悪性腫瘍が転移する割合
初回発情前避妊手術の予防効果
手術費用の目安
🔬 犬の乳腺腫瘍とは?
乳腺腫瘍は、乳腺(乳首周辺の分泌腺)の細胞が腫瘍化したものです。未避妊・中年齢以上のメス犬に多く発生しますが、避妊済みや高齢犬、まれにオス犬にも発生することがあります。
犬の乳腺は左右に5対・計10個あり、腹部の乳首沿いに並んでいます。初期は米粒〜大豆ほどの硬いしこりとして発見されることが多く、痛みを示さないため見逃しやすいのが特徴です。
乳腺腫瘍の一般的な発症年齢は10〜11歳前後。しかし、若いうちから発生するケースも珍しくなく、年1〜2回のセルフチェックと定期健診が重要です。
🔍 良性と悪性の見分け方【比較表】
自宅での見分けはあくまで目安です。確定診断には必ず動物病院での検査が必要です。以下は一般的な特徴の比較です。
| 比較項目 | 良性(乳腺腫) | 悪性(乳腺癌) |
|---|---|---|
| 大きさ | 小さい直径1cm前後が多い | 大きくなりやすい急速に成長する |
| 硬さ・表面 | 柔らかく滑らか、弾力性あり | 硬く、表面が不整形な場合も |
| 境界 | はっきり周囲との境界が明確 | 不明瞭周囲組織と癒着しやすい |
| 可動性 | 指で動かしやすい | 固着して動きにくいことがある |
| 皮膚の変化 | 発赤・潰瘍は少ない | 潰瘍・自壊(破れる)が起こりやすい |
| 痛み | ほとんどない | 炎症を伴うと痛がることも |
| 成長速度 | ゆっくり〜停滞 | 急速に増大することが多い |
| 転移リスク | なし(良性は転移しない) | 高い悪性の約50%が転移 |
| 犬の全身状態 | 食欲・元気は通常通り | 進行すると元気・食欲低下 |
⚠️ 重要:良性に見えるしこりでも、時間の経過とともに悪性へ転化することがあります。「小さいから安心」と放置しないでください。良性でも早期手術が推奨されます。
🖐️ 自宅でのしこりチェック方法
月に1〜2回、入浴後や寝ている時など愛犬がリラックスしているタイミングにチェックしましょう。
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仰向けにして乳腺を露出させる
愛犬を仰向けにして、お腹(乳首が並んでいる列)を確認します。 -
指の腹で乳首周辺を丁寧に触る
各乳首の周辺を指先でやさしく円を描くように触れ、しこりや硬さの違いを確認します。 -
左右対称に5対すべてをチェック
犬の乳腺は前から後ろに向かって1〜5番まであります。前の乳腺と後ろの乳腺を比較しながら確認しましょう。 -
しこり発見時は動かしてみる
しこりを指で軽く動かしてみます。動く場合は比較的良性の可能性がありますが、確認のため受診が必要です。 -
しこりがあれば速やかに動物病院へ
大きさ・位置・硬さをメモし、発見から数日以内に動物病院で相談しましょう。
🏥 病院での診断の流れ
① 視診・触診
獣医師がしこりの大きさ、硬さ、可動性、皮膚との癒着などを確認します。成長速度や自壊の有無も重要な判断材料です。
② 細胞診(針吸引生検)
細い針でしこりから細胞を採取し、顕微鏡で検査します。結果まで7〜10日ほどかかります。腫瘍の良性・悪性の予測や、他の腫瘍(肥満細胞腫など)との鑑別に役立ちます。乳腺炎との区別にも有効です。
③ 画像検査(レントゲン・エコー)
胸部レントゲンで肺転移の有無を、腹部エコーでリンパ節・卵巣・子宮の状態を確認します。手術前の術前検査として必須です。
④ 病理組織検査(確定診断)
手術で摘出した腫瘍組織を専門機関で検査し、良性・悪性・悪性度(グレード)を確定します。これが唯一の確定診断法です。術後の治療方針(追加化学療法など)を決める重要な検査です。
🔪 手術の種類と選び方
犬の乳腺腫瘍治療において外科手術が第一選択です。腫瘍の大きさ・個数・位置・細胞診結果・年齢・健康状態を総合的に判断して術式が選ばれます。
① 腫瘍のみ切除(部分切除)
数mm程度の微細な単発腫瘍が対象。乳腺組織を残すため再発リスクはあるが、体への負担が少ない。
② 単一乳腺切除
1cm未満の腫瘍1〜2個が対象の乳腺に限局している場合。その乳腺(1つ分)を切除する。
③ 乳腺区域切除(領域切除)
前方(1〜3番)または後方(3〜5番)の乳腺ブロックごと切除。複数しこりや位置が近い場合に選択。
④ 片側乳腺全切除
右側または左側すべての乳腺を一括切除。多発・広範囲の腫瘍、悪性度が高い場合に適応。
卵巣・子宮の同時摘出について:乳腺腫瘍の手術時は、女性ホルモンによる再発防止・新たな腫瘍の予防・卵巣子宮疾患の治療を兼ねて、卵巣・子宮摘出を同時に行うことが推奨されています。卵巣や子宮にも異常が見つかるケースが多く、同時手術がベストです。
💴 手術費用とペット保険
※費用は腫瘍の大きさ・手術範囲・入院日数・病院によって大きく異なります。自由診療のため、事前に見積もりを確認することをお勧めします。
乳腺腫瘍の治療はペット保険の補償対象です
乳腺腫瘍の手術・入院・通院は多くのペット保険で補償対象になります(保険会社・プランによって異なります)。手術費用140,000円のうち、保険で約50〜70%をカバーできた事例もあります。高額医療に備えるためにも、ペット保険への早期加入を検討しましょう。なお、腫瘍が発覚した後の加入では補償対象外になる場合があります。
🛑 予防法:避妊手術のタイミングが重要
乳腺腫瘍の最も有効な予防法は早期の避妊手術(卵巣摘出)です。女性ホルモンが乳腺細胞の腫瘍化に大きく関わっているため、ホルモンへの曝露を減らすことでリスクを劇的に下げられます。
🐾 かかりやすい犬種
以下の犬種は乳腺腫瘍の発生リスクが比較的高いとされています。特に注意してチェックしましょう。
小型犬
大型犬
🏠 術後ケアと回復生活
乳腺腫瘍の術後は、傷口の保護と感染予防が最重要です。以下のポイントを守って愛犬の回復をサポートしましょう。
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傷口を舐めさせない
術後服(リカバリースーツ)やエリザベスカラーで傷口を保護。自分で舐めると感染・縫合不全のリスクがあります。 -
安静と十分な休養
術後1〜2週間は激しい運動を避け、静かな環境で過ごさせましょう。段差の昇降も最小限に。 -
残存乳腺の定期チェック
術後も残っている乳腺部分に新しいしこりができないか、月1〜2回チェックを継続しましょう。 -
数ヶ月に一度の通院経過観察
悪性の場合は特に転移がないか定期的に画像検査(胸部レントゲンなど)を受けることが重要です。 -
食事・体重管理
肥満は乳腺腫瘍のリスク因子のひとつ。術後の体重管理も再発予防に役立ちます。
🛒 おすすめ術後ケア用品【Amazon】
乳腺腫瘍の術後は、傷口を保護する術後服(リカバリースーツ)が特に役立ちます。エリザベスカラーが苦手な犬にも有効です。
Kuoser ドッグリカバリースーツ メス犬用
術後・避妊手術後の傷口保護に。柔らかい素材で通気性も確保。着たままトイレもOK。お腹全体をカバーし舐め防止に効果的。
Kuoser ピンクリボン リカバリースーツ
Amazon’s Choice獲得の人気モデル。メス・オス兼用、術後の保護に最適。乳腺腫瘍手術後のケアにも対応。
SurgiSnuggly 術後リカバリースーツ
全犬種対応、男女兼用の定番リカバリースーツ。エリザベスカラーの代替として長年支持される信頼モデル。
日本国内での購入:楽天市場やAmazon.co.jpでも「犬 術後服 乳腺腫瘍」で多くの国内対応商品が見つかります。サイズ選びは犬の胴周り・背丈を測ってから選ぶと失敗が少ないです。獣医師に相談してから購入するのがベストです。
❓ よくある質問(FAQ)
良性と診断されても手術は必要ですか?
はい、必要です。良性の乳腺腫瘍でも時間の経過とともに悪性へ転化するリスクがあります。また、細胞診で「良性疑い」とされても、組織の一部に悪性成分が混在する「混合腫瘍」の可能性もあるため、早期手術が推奨されます。
高齢犬(12歳以上)でも手術は受けられますか?
術前検査で健康状態を確認したうえで、多くの場合手術は可能です。年齢だけで手術の適否を判断することはなく、16〜18歳の犬でも手術を行った事例があります。まず麻酔前検査を受けて、主治医と相談することをお勧めします。
手術しないで様子を見ることはできますか?
手術困難な状態(麻酔リスクが非常に高い、転移が進んでいるなど)でない限り、早期手術が第一選択です。放置すると腫瘍が大きくなり、切除が困難になったり、悪性転化・転移が進んで根治が難しくなります。
手術後に再発することはありますか?
乳腺組織が残っている場合、再発や新たな乳腺腫瘍の発生リスクがあります。乳腺切除後に残存乳腺に転移・再発が認められた症例は約6割という報告もあります。術後も定期的なチェックと通院が重要です。
オス犬も乳腺腫瘍になりますか?
まれですが、オス犬にも乳腺腫瘍が発生することがあります。オス犬の場合は悪性の確率が高いと言われているため、しこりを発見したら速やかに受診してください。
避妊手術済みでも乳腺腫瘍になりますか?
避妊手術を行った犬でも、ごくまれに発生します。特に2回目の発情以降に手術を行った場合はリスクが残ります。避妊手術済みであっても定期的なチェックは継続しましょう。
✅ まとめ:愛犬の乳腺腫瘍から守るためのポイント
🐶 今日から実践!乳腺腫瘍対策チェックリスト
- 月1〜2回、お腹のしこりチェックを習慣にする
- しこりを発見したら、数日以内に動物病院へ受診する
- 「小さいから大丈夫」と放置せず、良性でも手術を検討する
- 若いうちに避妊手術(初回発情前が最も効果的)を検討する
- 術前に血液検査・レントゲン・エコーで安全を確認する
- 手術後は術後服で傷口を保護し、定期通院を継続する
- ペット保険に早めに加入して高額医療に備える
- 年1〜2回の定期健診を動物病院で受ける
犬の乳腺腫瘍は早期発見・早期手術によって、完治を目指すことが可能な病気です。転移していなければ根治できるケースも多く、飼い主さんのこまめなチェックと適切な医療が愛犬の命を守ります。少しでも気になるしこりを見つけたら、「様子見」ではなく「まず受診」を心がけてください。
🩺 しこりを見つけたら、まず動物病院へ
「良性かもしれないから…」と判断を先延ばしにするほど、治療が難しくなります。早期受診が愛犬の命を守ります。かかりつけの動物病院にお早めにご相談ください。

