はじめに
愛犬とのコミュニケーションやしつけに欠かせない「おやつ」。喜ぶ姿を見るのは飼い主にとって至福の瞬間ですが、与え方を間違えると肥満や栄養バランスの乱れ、さらには病気のリスクにつながることもあります。本記事では、犬のおやつの適切な与え方、安全な選び方、カロリー管理の方法、そしてしつけやトレーニングでの効果的な活用法を詳しく解説します。
おやつの基本ルール|カロリー管理が最重要
おやつは1日の総カロリーの10%以内が鉄則
犬のおやつは、1日の総カロリー摂取量の10%以内、多くても20%までに抑えることが推奨されています。この割合を超えると、主食(ドッグフード)の量が減り、必要な栄養素が不足する可能性があります。
体重別|おやつの目安カロリー(1日分)
- 3kg: 約21〜30kcal
- 5kg: 約30〜37kcal(1日の総カロリー304kcal×10%)
- 10kg: 約40〜80kcal
- 20kg: 約80〜125kcal
※体重、年齢、運動量、避妊去勢の有無により変動します
1日の必要カロリーの計算方法
愛犬の1日に必要なカロリーは、以下の計算式で求められます。
📊 カロリー計算式
①安静時エネルギー要求量(RER)
RER = 70 × 体重(kg)^0.75
(電卓で:体重×体重×体重→√を2回押す→×70)
②1日のエネルギー要求量(DER)
DER = RER × 活動係数
活動係数の目安:
- 子犬(4ヶ月未満): 3.0
- 子犬(4ヶ月〜成犬): 2.0
- 成犬(避妊去勢なし): 1.8
- 成犬(避妊去勢済み): 1.6
- 老犬(7歳以上): 1.4
- 肥満傾向: 1.2〜1.4
おやつを与えたら主食を減らす
おやつのカロリーも1日の総カロリーに含まれます。おやつを1日の必要カロリーの10%与える場合は、主食を10%減らして調整しましょう。例えば、1日500kcal必要な犬の場合、おやつで50kcal与えるなら、主食は450kcal分に減らします。
安全なおやつの選び方|成分表をチェック
原材料表示の見方
おやつを選ぶ際は、パッケージの原材料表示を必ずチェックしましょう。原材料は含有量の多い順に記載されているため、最初に記載されている食材が主原料です。
✅ 安全なおやつのチェックポイント
- 原材料が明確: 「鶏肉」「ささみ」など具体的に記載
- ヒューマングレード: 人間が食べられる品質
- 無添加または天然添加物: 化学合成の保存料・着色料不使用
- 国産表示: 製造国が明記されている
- アレルゲン情報: 小麦、大豆、卵などアレルギー物質の有無
危険な添加物に注意
以下の添加物は犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、避けることをおすすめします。
⚠️ 避けるべき危険な添加物
1. 化学合成保存料
- エトキシキン: 発がん性の指摘あり
- BHA(ブチルヒドロキシアニソール): 発がん性の懸念
- BHT(ジブチルヒドロキシトルエン): 肝臓障害のリスク
2. 人工着色料
- 赤色3号、赤色40号、赤色102号、青色2号など
- 消化器官への負担、アレルギーの原因
3. その他の危険成分
- プロピレングリコール: 柔らかさを出すための添加物
- 亜硝酸ナトリウム: 発色剤、発がん性の懸念
- ソルビン酸カリウム: 過剰摂取で消化器障害
おやつの種類別の選び方
1. ジャーキー・肉系おやつ
選び方: 原材料が「鶏肉」「ささみ」など単一の肉のみのものが理想的。ただし、タンパク質含有量が60%を超える高タンパクおやつは、腎臓に負担をかける可能性があるため、与えすぎに注意しましょう。
注意点: 脂質が高いものは肥満の原因になります。低脂質(10%以下)のものを選びましょう。
2. ビスケット・クッキー系
選び方: 小麦粉不使用(グレインフリー)のものや、野菜・果物を使った低カロリータイプがおすすめ。砂糖・塩分不使用のものを選びましょう。
注意点: 炭水化物が多いため、与えすぎると肥満や糖尿病のリスクがあります。
3. デンタルケア系おやつ
選び方: 適度な硬さで噛むことで歯垢除去効果があるもの。ただし、硬すぎるおやつは歯が折れる・欠けるリスクがあります。愛犬の年齢や歯の状態に合わせて選びましょう。
注意点: 飲み込む際に喉に詰まらせないよう、必ず見守りながら与えてください。
4. 野菜・果物系おやつ
選び方: さつまいも、かぼちゃ、リンゴなど、犬が食べられる食材を使用したもの。ドライフルーツは糖分が凝縮されているため、少量に。
注意点: ブドウ・レーズンは絶対NG(腎障害の原因)。レーズン入りのおやつは絶対に避けましょう。
絶対に与えてはいけないおやつ・食べ物
🚫 危険度が極めて高い食べ物
1. チョコレート・カカオ製品
テオブロミンという成分が中毒を引き起こし、嘔吐、下痢、動悸、震え、最悪の場合は死亡することも。
2. ブドウ・レーズン
少量でも急性腎不全を引き起こす可能性があります。24時間以内に嘔吐、下痢、腹痛などの症状が現れます。
3. キシリトール
ガムやキャンディに含まれる人工甘味料。犬が摂取すると低血糖や肝不全を引き起こします。
4. ネギ類(玉ねぎ、長ネギ、ニラ、ニンニク、らっきょう)
赤血球を破壊し、貧血を引き起こします。加熱しても毒性は消えません。
5. アボカド
ペルシンという成分が中毒を引き起こし、嘔吐や下痢の原因になります。
6. アルコール
少量でも中毒症状を起こし、呼吸困難や昏睡状態に陥る危険があります。
7. マカダミアナッツ
中毒症状により、歩行困難、震え、高熱を引き起こします。
8. 人間用のお菓子全般
砂糖、塩分、脂質、添加物が多く、肥満や病気のリスクが高まります。
しつけ・トレーニングでのおやつの効果的な使い方
おやつはご褒美として「正しい行動」を教える
おやつは犬のしつけにおいて強力なツールです。好ましい行動をした直後におやつを与えることで、「この行動をすると良いことがある」と犬に学習させることができます。
トレーニング用おやつの選び方
- 小さく切れるもの: 1回分は米粒〜小豆サイズ(5mm角程度)
- 低カロリー: トレーニング中に何度も与えるため
- 嗜好性が高い: 犬が本当に喜ぶもの(ささみ、レバーなど)
- 持ち運びやすい: ポケットやポーチに入れられる
- すぐに食べられる: 硬すぎず、すぐに飲み込める
効果的なおやつの与え方|5つのポイント
1. タイミングは「行動の直後」
好ましい行動をした直後(3秒以内)におやつを与えることが重要です。時間が経つと、犬は何に対してのご褒美か理解できません。
2. 1回の量は少量で、回数を増やす
トレーニング中は、1回に与える量を極力少なく(米粒大)し、その代わり正しい行動ができた回数分だけこまめに与えましょう。「量より回数」が効果的です。
3. 褒め言葉と一緒に与える
おやつを与える際は、必ず「いい子!」「グッド!」などの褒め言葉と一緒に。声のトーンは明るく高めに。褒め言葉自体もご褒美として機能するようになります。
4. 徐々におやつの頻度を減らす(部分強化)
行動が定着してきたら、おやつを与える頻度を徐々に減らしていきます。最初は10回中10回与えていたものを、10回中8回、5回、3回と減らし、最終的には褒め言葉だけでも行動できるようにします。
5. トレーニング後は主食を減らす
トレーニングで多くのおやつを与えた日は、その分だけ主食の量を減らして1日の総カロリーを調整しましょう。
クリッカートレーニングとの併用
クリッカー(カチッと音が鳴る道具)を使うと、さらに効果的にしつけができます。「正しい行動→クリッカーの音→おやつ」という流れで、犬は「この音の後にご褒美がもらえる」と学習します。タイミングがシビアなトレーニングに最適です。
おやつを与える際の注意点
1. 年齢別の注意点
子犬(生後4ヶ月未満)
消化器官が未発達なため、おやつは基本的に不要。どうしても与える場合は、ふやかしたフードを少量に。
子犬(生後4ヶ月以降)
しつけ用に少量ずつ。カロリー計算をしっかり行い、成長に必要な栄養を主食から摂取できるよう調整。
成犬
1日の総カロリーの10%以内を守る。太りやすい犬種は特に注意。
老犬(7歳以上)
代謝が落ちるため、低カロリーで消化しやすいおやつを。硬すぎるものは歯や顎に負担がかかるため避ける。
2. 食物アレルギーに注意
犬の主なアレルゲンは、牛肉、乳製品、小麦、卵、鶏肉、ラム肉、大豆、トウモロコシです。初めてのおやつを与える際は少量から始め、皮膚の赤み、かゆみ、下痢、嘔吐などの症状が出ないか観察しましょう。
3. 喉に詰まらせないための工夫
- 大きなおやつは小さくちぎって与える
- 丸呑みしやすい犬には、手で持って少しずつ食べさせる
- 硬い骨やガムは、必ず見守りながら与える
- 留守番前に喉に詰まりやすいおやつは与えない
4. 肥満になりやすい犬種・状況
以下の犬種や状況では、特におやつの管理を厳格に行いましょう。
- 肥満になりやすい犬種: ダックスフンド、ビーグル、ラブラドール、コーギー、パグ、フレンチブルドッグ
- 避妊・去勢後: 基礎代謝が約20%低下するため太りやすい
- 運動量が少ない: 室内飼いで散歩時間が短い犬
- 高齢犬: 代謝が落ちるため太りやすい
手作りおやつのススメ|安全で経済的
手作りおやつのメリット
- 添加物ゼロで安全性が高い
- 愛犬のアレルギーに合わせて食材を選べる
- 市販品より経済的
- カロリー調整がしやすい
簡単!手作りおやつレシピ例
1. ささみジャーキー
鶏ささみを薄くスライスし、オーブン(120℃)で30〜40分乾燥させる。塩・調味料は一切不要。
2. さつまいもチップス
さつまいもを薄切りにし、オーブン(150℃)で20〜30分焼く。低カロリーで食物繊維豊富。
3. フローズンヨーグルト
無糖プレーンヨーグルトをシリコン型に入れて冷凍。夏の暑い日のご褒美に最適。
4. かぼちゃクッキー
かぼちゃペースト、米粉、少量の水を混ぜて生地を作り、薄く伸ばしてオーブン(180℃)で15分焼く。
よくある質問(Q&A)
Q1. おやつは毎日あげても大丈夫ですか?
A. 1日の総カロリーの10%以内であれば、毎日与えても問題ありません。ただし、毎日同じおやつばかりだと栄養が偏る可能性があるため、ローテーションすることをおすすめします。また、特にトレーニングをしない日は、おやつの量を減らすか与えない日を作ることで、おやつへの依存を防げます。
Q2. おやつをあげないとしつけはできませんか?
A. おやつはしつけの強力なツールですが、必須ではありません。褒め言葉、撫でる、遊ぶなどもご褒美になります。ただし、特に食いしん坊な犬や、トレーニングの初期段階では、おやつを使うと格段に効率が上がります。行動が定着してきたら、徐々におやつの頻度を減らし、最終的には褒め言葉だけで行動できるようにしましょう。
Q3. おやつを欲しがって吠える場合はどうすればいいですか?
A. 吠えている時におやつを与えると「吠えればもらえる」と学習してしまいます。吠えている間は完全に無視し、静かになった瞬間におやつを与えましょう。「静かにすることでおやつがもらえる」と教えることが重要です。また、おやつの時間を決めず、ランダムなタイミングで与えることで、要求吠えを減らせます。
Q4. ダイエット中でもおやつは与えていいですか?
A. ダイエット中でも、1日の総カロリー内であればおやつを与えて問題ありません。ただし、低カロリーのおやつ(茹でたささみ、野菜など)を選び、量を最小限に。また、普段のフードを1粒ずつおやつとして使う方法も効果的です。ダイエット用の低カロリーおやつも市販されているので活用しましょう。
Q5. 人間の食べ物を少しだけなら与えてもいいですか?
A. 基本的に人間の食べ物は与えないことをおすすめします。人間の食べ物は塩分、糖分、脂質が犬にとって過剰であり、調味料や添加物も含まれています。「少しだけ」のつもりが習慣化し、肥満や健康被害につながるケースが多いです。どうしても与えたい場合は、味付けしていない茹でた肉や野菜を極少量に留めましょう。
まとめ
1. ささみジャーキー
鶏ささみを薄くスライスし、オーブン(120℃)で30〜40分乾燥させる。塩・調味料は一切不要。
2. さつまいもチップス
さつまいもを薄切りにし、オーブン(150℃)で20〜30分焼く。低カロリーで食物繊維豊富。
3. フローズンヨーグルト
無糖プレーンヨーグルトをシリコン型に入れて冷凍。夏の暑い日のご褒美に最適。
4. かぼちゃクッキー
かぼちゃペースト、米粉、少量の水を混ぜて生地を作り、薄く伸ばしてオーブン(180℃)で15分焼く。
Q1. おやつは毎日あげても大丈夫ですか?
A. 1日の総カロリーの10%以内であれば、毎日与えても問題ありません。ただし、毎日同じおやつばかりだと栄養が偏る可能性があるため、ローテーションすることをおすすめします。また、特にトレーニングをしない日は、おやつの量を減らすか与えない日を作ることで、おやつへの依存を防げます。
Q2. おやつをあげないとしつけはできませんか?
A. おやつはしつけの強力なツールですが、必須ではありません。褒め言葉、撫でる、遊ぶなどもご褒美になります。ただし、特に食いしん坊な犬や、トレーニングの初期段階では、おやつを使うと格段に効率が上がります。行動が定着してきたら、徐々におやつの頻度を減らし、最終的には褒め言葉だけで行動できるようにしましょう。
Q3. おやつを欲しがって吠える場合はどうすればいいですか?
A. 吠えている時におやつを与えると「吠えればもらえる」と学習してしまいます。吠えている間は完全に無視し、静かになった瞬間におやつを与えましょう。「静かにすることでおやつがもらえる」と教えることが重要です。また、おやつの時間を決めず、ランダムなタイミングで与えることで、要求吠えを減らせます。
Q4. ダイエット中でもおやつは与えていいですか?
A. ダイエット中でも、1日の総カロリー内であればおやつを与えて問題ありません。ただし、低カロリーのおやつ(茹でたささみ、野菜など)を選び、量を最小限に。また、普段のフードを1粒ずつおやつとして使う方法も効果的です。ダイエット用の低カロリーおやつも市販されているので活用しましょう。
Q5. 人間の食べ物を少しだけなら与えてもいいですか?
A. 基本的に人間の食べ物は与えないことをおすすめします。人間の食べ物は塩分、糖分、脂質が犬にとって過剰であり、調味料や添加物も含まれています。「少しだけ」のつもりが習慣化し、肥満や健康被害につながるケースが多いです。どうしても与えたい場合は、味付けしていない茹でた肉や野菜を極少量に留めましょう。
犬のおやつは、正しく使えば愛犬との絆を深め、しつけやトレーニングを効果的に進める素晴らしいツールです。しかし、与え方や選び方を誤ると、肥満や病気のリスクを高めてしまいます。
1日の総カロリーの10%以内を守り、安全な成分のおやつを選び、主食の量を調整することが健康管理の基本です。また、しつけにおやつを使う場合は、タイミングと量に注意し、徐々に頻度を減らしていくことで、おやつへの依存を防げます。
愛犬の体重や体型を定期的にチェックし、必要に応じておやつの量を見直しましょう。適切なおやつ管理は、愛犬の健康寿命を延ばすことにつながります。
参考文献
- 環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
- 日本動物医療センター「ペットの1日フード量計算」
- 一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」
- 公益社団法人日本獣医師会「犬の栄養管理ガイドライン」
- 農林水産省「ペットフード安全法に基づく規制」
📌 専門家への相談を推奨します
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個々の犬の健康状態や体質によって最適な対応は異なります。愛犬のおやつや食事管理に関して具体的な疑問や不安がある場合は、必ず獣医師や動物栄養士などの専門家にご相談ください。特にアレルギーや持病がある場合、肥満や体重管理が必要な場合は、専門家の指導のもとで適切なおやつ選びと与え方を実践してください。

