👴 シニア犬の介護と健康管理|高齢犬との快適な暮らし方
愛犬との暮らしの中で、シニア期を迎えることは特別な時間です。でも、「介護が必要になったらどうしよう」「認知症になったらどう対応すればいいの?」と不安に感じる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、シニア犬の介護と健康管理について、認知症や関節症などの病気への対策、快適な生活環境の作り方、介護の具体的な方法を詳しくご紹介します。愛犬が年を重ねても、できるだけ元気で快適に過ごせるよう、飼い主さんができることを一緒に学んでいきましょう。
💡 愛犬の高齢化について知っておきたいこと
🐾 壮年期から老年期への変化
犬の平均寿命はおよそ12〜15年で、人間よりも早く歳をとります。老齢になると、目や耳が悪くなり、筋力も低下して病気に罹りやすくなります。脳も老化して体積が小さくなり、いろいろな身体機能が衰えていきます。
今までできていた排泄などの日常生活や家族とのコミュニケーションが上手くできなくなることがあります。犬も「認知機能不全症候群」というヒトの認知症に類似した症状を呈し、介護が必要になる場合があるのです。
💭 飼い主さんの心構え
老化は避けられない加齢性変化ですが、良い生活習慣により進行を遅らせること、介護グッズを使って老化症状を緩和することはできます。早めの対策で愛犬が年をとっても快適な生活を送れるようにしてあげましょう。
犬の老化や認知機能不全症候群の特徴、老化予防に役立つ栄養管理や生活習慣について知っておくことが大切です。
🏥 シニア犬によく見られる症状と病気のサイン
🍽️ ご飯を食べなくなった
老犬がご飯を食べない原因として、老化の他に病気の可能性が挙げられます。人と同様に犬も歳をとると咀嚼筋が衰え、噛む力が弱くなってきます。そのため、ご飯をふやかしたり、柔らかいフードを選ぶのがおすすめです。
ただし、食欲不振が続いたり嘔吐や下痢がある場合は病気のサインかもしれません。また歯周病があると口が痛くて食べられない場合もあるため、普段の観察が重要です。
🌙 夜泣きをする
高齢になるとさまざまな原因で夜寝られなくなります。トイレが近くなって飼い主を呼んだり、寝静まっていると不安を感じやすくなったりします。飼い主がいない昼に寝て夜に目覚めてしまい、昼夜逆転してしまうこともあります。
また、認知症の影響で夜泣きをしてしまう場合もあります。まずは部屋を少し明るくし、寝床を暖かく整えるなど安心させる工夫をしてみましょう。動物病院で適切な治療を受けることで症状が改善する場合もあります。
💧 水をよく飲む
普段よりも頻繁に水を飲むようになったら要注意です。糖尿病、腎不全、クッシング症候群などの病気が隠れているかもしれません。まずは自宅で1日の飲水量を調べてみてください。50〜100ml/kg以上水を飲んでいるなら、病的な多飲の可能性があります。動物病院で検査を受けてみてください。
😮💨 息が荒い
心臓病や肺疾患、痛みや緊張など、さまざまな原因で息が荒くなります。特に咳が頻繁に出る、散歩中に息切れする場合は、早急に動物病院に連れていくのをおすすめします。
また、部屋の温度が合っていないと、喉が乾いたときも息が荒くなるので、愛犬が寝ている部屋を確認することも忘れずに行いましょう。
🧠 シニア犬の認知機能不全症候群(認知症)
📋 認知症について
犬でも認知機能不全症候群というヒトの認知症と似た状態になることがあります。14歳以上のシニア犬に発生が多く、17歳以上では半数以上に徴候がみられます。
よく観られる症状は、飼い主の呼びかけにほとんど反応しない、夜起きて鳴く、排泄を失敗する、目的もなく歩き回る、部屋の角や隙間で行き詰まるなどです。頭の下がった姿勢、ぎこちない歩き方、視力低下など感覚機能の変化もみられます。
🔍 認知症の5つの特徴的症状
① 見当識障害
周囲の環境や自分の居場所が把握できなくなることを指します。初期症状としては、なじみのある人や動物を認識できなくなる、狭いところに入りこみたがる、障害物が避けられない、こぼしたフードを見つけられないなどが挙げられます。
症状が進むと、飼い主さんを認識できない、壁の前でぼんやり立ち尽くす、直角の角も曲がれないなどの行動に変わります。
② 社会的交流の変化
人や他の動物に対する接し方の変化や、反応の低下を指します。飼い主さんを帰宅時に迎えに行かなくなる、なでられたり褒められたりしても喜ばなくなる、子どもや同居の動物に対して攻撃的になるなどが挙げられます。
③ 睡眠サイクルの変化
昼夜逆転を指します。昼間の睡眠時間が増え、夜鳴きも含め、夜間に起きている時間が長くなります。症状が進むと、昼はほとんど寝ていて、夜中から明け方にかけて覚醒し、飼い主さんの静止が効かない状態になります。
④ 不適切な排泄
トイレの場所を忘れてしまったり、コマンドがわからなくなってしまうことを指します。粗相が多くなっていくことから始まり、失禁や、寝たきりによる垂れ流しにまで進むこともあります。
⑤ 活動性の変化
活動に無関心・無気力になる、あるいは無目的な行動が増えることを指します。初期は、落ち着きがなくなる、あるいは寝てばかりになるという日々の行動の変化が見られます。症状が進むと、目的なく家の中をうろうろ歩き回ったり、自分を中心に円を描くように歩き続けるようになります(旋回)。
⚠️ 他の病気との見分け方に注意
認知症の症状は他の病気の症状の場合もあります。特にトイレの失敗は、膀胱炎や糖尿病、クッシング症候群、前立腺肥大、ホルモン疾患による尿もれなどでも起こります。
また、脳腫瘍や神経疾患でも、不安感やせん妄症状から、夜泣きや徘徊が起こることもあります。まずは全身の検査で特徴的な症状の確認と、他の病気の除外が必要です。
💊 認知症の治療と予防
現在、犬の認知機能不全症候群を根本的に治す薬はありません。症状を緩和する薬物療法、進行を抑える目的でサプリメント等を給与して対処しています。
高齢犬の不快感をとる、生活環境や接し方を変えて、不安やストレスを取り除くことで症状を緩和できることがあります。
🥗 予防に役立つ栄養素
- DHAやEPA:脳や様々な臓器の老化の原因となる血管の老化予防に良いといわれています
- ビタミンEなどの抗酸化物質:老化の原因となる活性酸素を除去する作用があるといわれています
- ポリフェノール:抗酸化作用があり、脳の老化を緩やかにする可能性があります
🦴 シニア犬の関節炎について
📊 関節炎の実態
関節炎は、成犬(1歳以上)の20%以上がかかっているといわれていて、若い頃から高齢期までたくさんの犬が悩まされている病気です。特に高齢犬にとっては身近な病気で、ある研究によると、10歳以上で44%以上もの犬の関節に問題があることがわかりました。
ここで注目したいのが「飼い主さんが気づきにくい」ということです。関節に問題があると分かった犬の飼い主さんのうち、その50%が、愛犬の関節炎に気づいていなかったことがわかりました。
🔍 関節に痛みを感じているときの犬の行動
- 散歩に行きたがらない
- 室内外で段差の上り下りを嫌がる
- 走ることが少なくなった
- 立ち上がるのがつらそう、ゆっくりになった
- 元気がない
- 尾を下げていることが多い
- 足を引きずったり、上にあげていることがある
- 昼間にずっと寝ている、熟睡できていない様子
飼い主さんが「高齢になったから」「歳を重ねて大人しくなったから」と思いがちな変化でも、実はその陰に関節炎や他の病気が隠れている場合があります。
💊 関節炎の治療とケア
関節炎の治療方針は、以前の考え方から変わってきています。今は炎症をコントロールしつつ、以下の3つを取り入れることを推奨しています。
🏃 1. 適度な運動療法(運動機能維持)
関節炎を起こすと、犬は痛みからその部位を動かさなくなります。そうすると、動かさなくなった関節周辺の軟部組織が萎縮し、筋肉も硬くなって、関節軟骨自体もクッション性を失います。
適度な運動療法によって関節周囲の軟部組織や関節軟骨に栄養を行きわたらせながら、必要な筋肉を落とさないことで、関節を安定させることができます。
🏠 2. 生活環境の改善、サポートグッズの活用
関節を安定させ、動きやすくするためには、まず滑りにくくすることが重要です。滑り止めマット、衝撃吸収マット、犬用滑り止め付靴下、犬用靴などを活用しましょう。
歩行補助ハーネスや車椅子(二輪)、歩行器(四輪)、カートなども、愛犬の状態に合わせて上手に活用することで、自立度が向上し、精神的にも安定します。
🥗 3. 栄養管理(適正体重維持)
関節炎には、肥満が大敵です。体重をコントロールして、関節にかかる負担をなるべく軽くすることが大切です。また、筋肉に必要なタンパク質・アミノ酸の適量摂取を心がけましょう。
🏡 シニア犬のための生活環境・整備
🛡️ 安全な環境
犬も高齢になると足腰が弱くなり、つまずく、滑る、転ぶなどの事故を起こし易くなります。滑りにくく、段差がない、転んだ時も衝撃が少ない安全な環境で生活させてあげましょう。
さらに後退することが苦手になる、室内の環境が把握できなくなることもあり、部屋の角や隙間、段差が危険な場所になります。円形サークルに入れて、安全なサークル内に行動範囲を制限するのも良いでしょう。
🛠️ 便利グッズ
- 滑り防止マット、衝撃吸収マット
- 犬用滑り止め付靴下、犬用靴
- 円形サークル
😌 身体に負担が少ない環境
室内では移動が少なくて済むように、水飲み、ベッド、トイレ等の場所を近くにまとめましょう。あまり寝返りをうたなくても、痺れや血行障害にならないよう、軟らかく体圧分散性に優れた寝床(マット等)を使いましょう。
🛠️ 便利グッズ
- 低反発マット、高反発マット
- 体圧分散マット
💕 安心できる生活習慣
シニア犬は目や耳が悪くなり、人が近づいても気が付かないことがあります。声をかけて触る、前方からゆっくり近づくなど配慮をしましょう。また、食事や散歩などの日課は毎日、規則正しく行いましょう。大きな環境の変更はできるだけ避けましょう。
🧹 掃除しやすい環境
食べこぼしや粗相をした時のために、シニア犬の生活環境は掃除や清掃がしやすい工夫をしておきましょう。
🛠️ 便利グッズ
- 撥水シート、ペットシーツ
- タイルマット
- 洗濯し易い素材の犬用クッション
🍽️ シニア犬の介護の具体的な方法
🥄 食事介助
シニア犬は低い位置に置いた食器からフードをとることが困難になります。口や舌の動きが悪くなりフードを食べるのが下手になります。食器をある程度高い位置に置いて、食べ易い形状のお皿で給餌してあげましょう。
🛠️ 便利グッズ
- 高さのある食事台、底が丸い皿
さらに食欲が低下、思うように動けない等の理由により自力で十分に食べられなくなったら、食事介助をしてあげましょう。フードを口に運ぶ、流動食をシリンジで与えるなどの方法があります。
💧 飲水の介助
飲水はスポイトやシリンジ、プラスチック製の油さしなどを利用して与えます。愛犬の頭をやさしく持ち上げ、牙の後ろの隙間から少しずつ流してあげると飲みやすくなります。
🚽 排泄介助とトイレのケア
高齢になると老化により筋力や認知機能が衰え、トイレの失敗が多くなります。
💕 失敗を受け入れてあげる
粗相をしても怒らずに、失敗を受け入れてあげてください。愛犬自身も今まできていたことが次第にできなくなり、ストレスを感じています。粗相をしてしまったときはノーリアクションで片づけ、臭いが残らないようにすることが大切です。
🛠️ 排泄用グッズを使用
失敗が多いときは、ペットシーツやオムツを使用することで片づけの手間が軽減します。皮膚炎予防のためオムツは頻繁に交換しましょう。汚れやすい部分にワセリンなどを塗ってあげると、皮膚に直接汚れがつくのを防げます。
🤲 排泄介助の方法
立って排泄ができる子はお腹を両手で支え、転ばないようにしてあげると排泄しやすくなります。麻痺で自力排泄が難しい場合は、獣医師の指導のもとで圧迫排尿などの介助を行いましょう。
🛏️ 寝たきり犬のケア
🔄 褥瘡予防の寝返りやマッサージ
褥瘡(じょくそう)は、長時間同じ姿勢でいることによって起こる床ずれです。褥瘡を起こさないために、2〜3時間おきに寝返りさせて同じ部分に負担をかけないことが大切です。また、背中や脚などを軽くマッサージして血行を良くすることも効果的です。
🛏️ 床ずれ予防マットを選ぶ
毎日2〜3時間おきに寝返りを打たせるのは大変です。そんなときは、床ずれ予防マットを活用してみてください。床ずれ予防マットは、体圧を均等に分散させて褥瘡を予防します。
🏥 床ずれが起きてしまったら
床ずれが起きてしまったら、まずは動物病院に相談しましょう。定期的に保護クリームを塗ったり、ガーゼやタオルを敷いて負担がかからないよう自宅ケアをすることも大切です。
💪 運動・脳への刺激
🚶 運動について
運動は脳の老化予防に効果があり、筋力維持や寝たきり予防にもなりますので積極的に行ってください。シニア犬には散歩をお勧めします。散歩は一度に長い距離を歩くより、短い距離を複数回行くのが良いでしょう。
坂道や階段は関節の負担になりますので避けましょう。転倒しやすい犬はコンクリートを避けて土や草の上を歩かせましょう。歩行に障害がある場合は、犬用に開発された補助具を利用して短い距離の散歩を楽しみましょう。
🛠️ 便利グッズ
- 歩行補助ハーネス
- 車椅子(二輪)、歩行器(四輪)
- カート
🧠 脳への刺激
五感の刺激、遊び、家族や他の犬とのコミュニケーションは、脳の老化を予防する良い刺激となります。散歩に出て、日光を浴び、音を感じ、匂いを嗅がせましょう。運動にはなりませんが、カートに乗せて外に連れ出すだけでも良い刺激が受けられます。
年をとると犬はあまり遊ばなくなりますが、ご褒美にオヤツを使いモチベーションを上げながら遊んであげましょう。犬から要求がなくても適度に構ってあげましょう。シニア犬が嬉しい、楽しいと思うことを毎日の生活に取り入れましょう。
💆 介護で疲れないためにはセルフケアも大切
老犬の介護は、家族にとって大きなチャレンジでもあります。飼い主自身が疲れ果ててしまっては、介護を続けることが困難になります。リフレッシュする時間をつくり、飼い主も心と体のバランスを保ちながら無理のない介護を続けることが大切です。
👨👩👧👦 家族や周りを頼ろう
介護は、ひとりで抱え込むものではありません。家族や友人、動物病院や老犬ホームなどの外部サービスを活用することで、介護の負担を分散できます。
🛠️ 介護グッズを積極的に活用
最近は飼い犬の高齢化に伴い、便利なアイテムがたくさん出ています。これらを活用しない手はありません。日常使いの介護グッズからハンドメイドの防音ケージまで、好みのアイテムを上手に活用して、毎日のお世話を楽にしましょう。
💬 ほかの飼い主さんと情報や悩みを共有する
同じ経験を持つ飼い主さんとの交流は、介護の悩みを軽減したり新たなヒントを得る良い機会になります。ぜひSNSなども活用して、積極的に交流してみてください。
🏥 専門機関へ相談してみる
些細な疑問や不安も、専門機関に相談するのがおすすめです。地域によっては老犬専門の動物病院や、訪問診療を行う獣医師もいます。また、WEB上で健康相談を行えるサービスもあります。
🏠 老犬ホームという選択肢も
介護が難しい場合には、老犬ホームの利用を検討することもひとつの選択肢です。専門的なケアを行ってくれるため、安心して愛犬を預けられます。
✨ まとめ
シニア犬の介護は、愛犬との新たな絆を築く貴重な時間です。認知症や関節炎などの病気についての知識を持ち、適切な対応をすることで、愛犬は快適に過ごすことができます。
認知症の5つの特徴的症状(見当識障害、社会的交流の変化、睡眠サイクルの変化、不適切な排泄、活動性の変化)を理解し、早期発見に努めましょう。関節炎は成犬の20%以上、10歳以上では44%以上が抱える問題で、飼い主さんが気づきにくいため、普段の行動をよく観察することが大切です。
生活環境は、滑りにくく、段差がない、転んだ時も衝撃が少ない安全な環境を整えましょう。食事、排泄、寝たきりケアなど、それぞれの段階に応じた介護方法と便利グッズを活用することで、飼い主さんの負担も軽減できます。
運動と脳への刺激は老化予防に効果的です。短い距離を複数回散歩する、五感の刺激を与える、家族や他の犬とのコミュニケーションを大切にするなど、シニア犬が嬉しい、楽しいと思うことを毎日の生活に取り入れましょう。
介護は飼い主にとっても負担が大きいため、ひとりで抱え込まず、家族や専門機関を頼ることが大切です。介護グッズを活用し、他の飼い主さんと情報交換をすることで、心の支えにもなります。
「終生飼育」は、愛犬を最期まで責任を持って飼うという飼い主の使命です。愛犬との別れが訪れるその日まで精一杯愛情を注ぐことが、愛犬にとって幸せな時間となります。少しでも長く愛犬と過ごす時間を楽しみながら、絆をより深めていきましょう。
📚 参考文献
- 明治ペットケア「お役立ち情報_シニア期になった愛犬に関するお話。(ケアと介護)」
- ピースワンコ・ジャパン「老犬と幸せに暮らす。介護が必要になったとき家族ができることとは?」
- アニコム損保「犬の認知症ってどんな病気?原因や症状、対策法まで解説!」
- APMA(動物予防医療普及協会)「高齢期の犬と関節炎|シニア犬との暮らし」
- カインズ「老犬(シニア犬)の介護に必要なものとは?介護のポイントを解説」
- GREEN DOG「シニア犬の食事介助の手順とコツ|寝たきりの愛犬のために」
※ この記事は専門的な情報を参考にしていますが、愛犬の健康状態や症状によって適切な対応は異なります。特に認知症や関節炎などの病気が疑われる場合は、必ず獣医師に相談しながら適切な治療とケアを行ってください。また、介護方法の選択や実施に関しては、飼い主さんご自身の判断と責任のもとで行ってください。
