犬を飼えなくなった時の選択肢|里親・施設・返還の正しい方法と支援機関
病気、引っ越し、家族のアレルギー。ある日突然、犬と暮らし続けることが難しくなる方はいます。慌てて動くと、犬にとって最悪の結果になることもあります。この記事では、犬を飼えなくなった時に取れる選択肢と正しい手順を整理します。

結論
犬を飼えなくなった時の選択肢は、大きく4つです。①自分で里親を探す ②保護団体・NPOに相談する ③自治体(動物愛護センター等)に相談する ④ブリーダーやペットショップに返還を相談する、この順で検討するのが基本です。
優先すべきは、犬の生活環境が大きく変わらない方法です。まずは信頼できる知人や保護団体をあたり、自治体への引取り依頼は最後の相談先と考えてください。動物愛護管理法の改正で、安易な引取り依頼は拒否できる仕組みになっています。
そして、手放す前にできる支援策もあります。一人で抱え込まず、行政や相談窓口に早めに連絡することが、犬にとっても飼い主さんにとっても最善の一歩です。
この記事でわかること
- 犬を手放さざるを得なくなる代表的な事情と、全国の統計データ
- 里親探し・保護団体・自治体・返還という4つの選択肢の違い
- それぞれの選択肢で必要になる準備と手順
- 里親詐欺の手口と、被害を防ぐための具体策
- 手放さずに済ませるための支援制度・相談できる機関
犬を飼えなくなるのは、決して珍しいことではありません
まず知っておいてほしいことがあります。犬を飼えなくなる状況は、あなただけに起きているわけではありません。
環境省が公表している令和6年度(2024年度)の統計では、全国の自治体が引き取った犬は17,399頭でした。そのうち飼い主本人からの引取りは、成熟した犬が2,072頭、幼齢の子犬が143頭で、合計2,215頭となっています。犬猫を合わせると、同年度に自治体へ引き取られた数は39,409頭にのぼると報告されています。
同じ令和6年度の内訳を見ると、返還が6,663頭、譲渡が8,930頭、殺処分が1,964頭(うち幼齢371頭)でした。多くの犬が新しい家庭や元の飼い主のもとへ戻っている一方で、命を落とす犬がまだ残っているのが現状です。
手放さざるを得なくなる主な事情
相談窓口や保護シェルターの情報を整理すると、理由には共通したパターンがあります。
| 事情のタイプ | 具体的な状況 |
|---|---|
| 経済的な問題 | 収入減少、医療費の負担増などで飼育の継続が難しくなる |
| 飼い主の健康問題 | 持病の悪化による入院、要介護状態、認知機能の低下で世話が行き届かなくなる |
| 住環境の変化 | 急な引っ越し、ペット不可物件への転居、ご近所トラブル |
| 家族構成の変化 | 子どもが生まれた、家族がアレルギーを発症した |
| 飼い主の死亡 | 独居の高齢者が亡くなり、ペットだけが残される |
| 多頭飼育崩壊 | 頭数が増えすぎて適切な管理ができず、衛生環境が悪化した状態 |
多頭飼育崩壊とは、多数の動物を飼育しながら適切な管理ができなくなり、不衛生な環境悪化を招く状態を指すと定義されています。高齢化や独居化が進む地域では、こうした相談が増えていると報告されています。
ポイント
相談窓口では「自分を責める必要はない、一人で抱え込まず相談してほしい」と繰り返し呼びかけられています。最も避けたいのは、限界まで我慢して状況を悪化させることと、遺棄という違法行為に走ることです。早い段階で相談するほど、犬にとって良い選択肢が残ります。
手放す前に確認したい3つのこと
行動に移す前に、次の3点を確認してください。ここで解決できるケースもあります。
1. 一時的な問題か、恒久的な問題か
入院や短期の転勤であれば、ペットホテルや預かりボランティアで乗り切れる場合があります。一時預かりに対応している団体もあるため、「手放す」以外の選択肢がないか先に確認しましょう。
2. 犬の情報を整理する
どの選択肢を選ぶにしても、犬の情報は必ず求められます。年齢、犬種、体重、性別、不妊去勢手術の有無、ワクチン接種歴、持病や服薬内容、問題行動の有無、マイクロチップ登録の状況をまとめておきましょう。この準備があるだけで、相談はスムーズに進みます。
3. 費用の見通しを立てる
保護団体への依頼には、医療費や飼養費の負担を求められることがあります。無料で丸ごと引き受けてもらえる前提で動くと、行き詰まりやすくなります。

選択肢① 自分で里親を探す
最初に検討したいのが、飼い主自身で新しい家族を探す方法です。犬の性格や生活習慣を一番よく知っているのは飼い主さんだからです。
探し方の順番
- 友人・知人・親族など、素性がわかる相手に相談する
- かかりつけの動物病院やトリミングサロンに事情を伝える
- 里親募集のプラットフォームやSNSで募集する
環境省の事例紹介では、長野市保健所をはじめ複数の自治体が「飼い主による譲渡先探しのサポート」を行っています。ホームページへの掲載、SNSでの発信、休日の譲渡会といった支援が、自治体の引取り数の減少につながったと報告されています。自分で探す場合も、まず自治体にサポート制度がないか問い合わせる価値があります。
必ず設けたいトライアル期間と契約書
千葉県鎌ケ谷市のNPO法人With Vetsでは、ヒアリングシートの記入から始まり、1週間のトライアル期間を設けています。トライアル開始時には契約書に署名し、譲渡費用の半額を預ける仕組みで、中断した場合は返金されます。正式譲渡の際は譲渡契約書を交わし、マイクロチップの登録変更とペット保険への加入まで行われます。
一般的にも、1〜2週間のトライアル期間を設けるのが通例とされています。個人間の譲渡でも、この流れを真似るだけで大きなトラブルを避けられます。
選択肢② 保護団体・NPOに相談する
身近に引き受け手が見つからない場合は、保護団体やNPOへの相談が現実的な選択肢になります。
受け入れには条件があります
保護団体は無条件で犬を受け入れる場所ではありません。依頼の際には、やむを得ない事情かどうか、犬の健康状態、問題行動の有無、不妊去勢手術の実施状況、団体側の受入可能頭数などが確認されます。条件は団体ごとに異なるため、複数の団体に問い合わせる前提で動きましょう。
相談から引き渡しまでの流れ
保護犬シェルターのanifareでは、LINEまたは電話での相談、アドバイザーとの相談、Webからの申し込み、シェルターへのお迎えという4ステップが案内されています。同団体では、預かった犬の97%が1ヶ月以内に新しい家族が決まっていると公表されています。
注意
団体を選ぶときは、活動実績や飼育環境の情報が公開されているかを確認してください。見学を受け入れているか、譲渡後の連絡体制があるかも重要な判断材料になります。引き渡し後の扱いが不透明な相手には、大切な家族を託さないでください。
飼い主に万一のことがあった場合に備える仕組み
NPO法人人と動物の共生センターは「ペット後見事業」を行っています。対象は、飼い主の死亡・施設入所・重度障害・要介護など、飼育の継続が客観的に難しくなった場合に限定されています。
費用は、体重10kg以下の犬で100万円、10kg以上は体重×10万円という設定で、これに契約費用10万円と医療費の実費が加わると案内されています。決して安くはありませんが、高齢の飼い主さんが元気なうちに備えておく手段のひとつです。

選択肢③ 自治体(動物愛護センター等)に相談する
自治体への相談は、他の方法を尽くしたあとの選択肢と考えてください。
法律ではどう定められているか
動物の愛護及び管理に関する法律の第35条には、「都道府県等は、犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない」と定められています。ただし条文には続きがあり、「犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他…引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる」とされています。
環境省の資料でも、動物取扱業者からの引取りや、繰り返しの引取り要求は拒否できると整理されています。同時に、都道府県等には引き取った犬猫の返還や譲渡に努める義務があるとされています。
安易な引取り依頼は推奨されていません
法改正の趣旨について、動物問題に取り組む団体からは「安易な引取りが殺処分数の増加につながる可能性があり、望ましいとはいえない」という解説が示されています。相談窓口の情報でも、動物愛護センターや保健所の役割はあくまで動物の保護と公共衛生の維持にあり、安易な飼育放棄を受け入れる場所ではないと説明されています。
とはいえ、飼い主が亡くなった、健康上どうしても飼育できないといった事情なら、自治体は相談に応じてくれます。「引き取ってください」ではなく「飼えなくなりそうなので相談したい」と伝えると、譲渡先探しの支援制度を案内してもらえることがあります。
選択肢④ ブリーダー・ペットショップに返還を相談する
迎え入れた時の契約書を確認してみてください。「飼育が困難になった場合は要相談」といった返還条項が入っていることがあります。条項があれば、まず購入元に連絡しましょう。
ただし対応は個別判断であり、必ず受け入れてもらえる保証はありません。契約内容をめぐってトラブルになった場合は、消費生活センターに相談できます。全国共通の消費者ホットライン「188」から、最寄りの窓口につながります。
なお近年は、さいたま市の「ペットフェリーチェ」のように、生体を販売せずブリーダーの引退犬や飼い主都合の犬を保護して譲渡につなげる新しい業態の店舗も紹介されています。
4つの選択肢を比較する
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| ①自分で里親を探す | 時間に余裕があり、犬の状態が安定している | 相手の身元確認とトライアル・契約書が必須 |
| ②保護団体・NPO | 身近に引き受け手がいない、専門的な支援が必要 | 受入条件と費用負担があり、団体ごとに異なる |
| ③自治体に相談 | 飼い主の死亡や重い健康問題など、やむを得ない事情 | 安易な引取り依頼は拒否される場合がある |
| ④購入元へ返還相談 | 契約書に返還条項がある | 対応は個別判断で、受け入れの保証はない |
里親詐欺を防ぐために知っておきたいこと
個人で里親を探すときに、最も警戒したいのが里親詐欺です。虐待目的、血統書付きの犬の転売、実験動物としての転売などが目的とされています。
典型的な手口
- 同じ譲り主から複数頭を希望してくる
- 複数の譲り主に対して同時期に応募している
- 連絡先を明かさない、または身元を偽装している
- 自宅での譲渡や面会を拒む
- 優しい言葉で信頼を得ようとする
- 「すぐに引き取りたい」と急かしてくる
ターゲットにされやすいのは、人気の小型犬や、避妊去勢手術を受けていない若い個体だと指摘されています。
被害を防ぐための具体策
実践したい5つの対策
- 譲渡誓約書に氏名・住所・連絡先を明記してもらう
- 身分証を提示してもらい、記載内容と照合する
- 相手の自宅で面会し、飼育環境を自分の目で確認する
- 引き渡しも自宅で行い、家族全員と会っておく
- 急かされても即決せず、トライアル期間を必ず設ける
万一被害に遭った場合は、やり取りの記録などの証拠を保全し、弁護士に相談したうえで内容証明郵便を送る、警察に相談するといった流れが弁護士監修の解説で示されています。譲渡時の書類が残っているかどうかが、その後の対応を大きく左右します。

保護犬を支援したい方ができること
この記事にたどり着いた方の中には、「手放す側」ではなく「支えたい側」の方もいるはずです。直接引き取ることが難しくても、支援の形はあります。
たとえばAmazonには「保護犬・保護猫 支援プログラム」があり、施設が公開しているほしい物リストからフードや消耗品を直接届けられます。楽天市場でも、保護犬向けのチャリティーグッズや寄付付き商品が扱われています。日常の買い物の延長で参加できる方法として、選択肢のひとつに入れてみてください。
また、自治体や団体の譲渡会に足を運ぶ、SNSで里親募集情報を広めるといった行動も、犬の行き先を増やす助けになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 保健所に電話すれば必ず引き取ってもらえますか?
A. 必ずではありません。動物愛護管理法第35条では引取り義務が定められていますが、引取りを求める相当の事由がないと認められる場合などには拒否できるとされています。まずは「引き取ってほしい」ではなく「相談したい」と伝え、譲渡先探しの支援がないか確認してください。
Q. 高齢犬や持病のある犬でも保護団体は受け入れてくれますか?
A. 団体によって対応が分かれます。健康状態や受入可能頭数が条件になっているため、複数の団体に問い合わせることをおすすめします。医療費の負担を求められる場合もあります。
Q. SNSで里親を募集しても大丈夫でしょうか?
A. 出会いの幅は広がりますが、相手の素性が見えにくいという弱点があります。譲渡誓約書と身分証の確認、自宅での面会、トライアル期間の設定は必ず行ってください。
Q. 引っ越し先がペット不可でした。どうすればよいですか?
A. まずはペット可物件への変更や、一時預かりで期間を乗り切れないかを検討してください。それが難しい場合は、時間に余裕をもって里親探しや団体への相談を始めましょう。日程が迫るほど選択肢は減ります。
Q. 自分が高齢で、将来が不安です。今できる備えはありますか?
A. ペット後見のように、飼い主の死亡や施設入所に備えて犬の行き先を確保する仕組みがあります。費用や適用条件は団体ごとに異なるため、元気なうちに内容を確認しておくと安心です。
まとめ
犬を飼えなくなった時、最も大切なのは「早く相談すること」です。時間があれば、里親探しも団体への相談も丁寧に進められます。追い詰められてからでは、選べる道が減ってしまいます。
令和6年度の統計では、引き取られた犬の多くが返還や譲渡につながっています。正しい手順を踏めば、犬が新しい家族と出会える可能性は十分にあります。犬の健康状態や行動面で気になる点があるときは、かかりつけの獣医師にも相談しながら進めてください。
免責事項
本記事は、公的機関の公表資料や各団体の公開情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成しています。法律や制度、各団体の受入条件・費用は変更される場合があります。記事内で紹介した統計は令和6年度(2024年度)の公表値です。
実際の手続きや個別の事情については、お住まいの自治体の動物愛護センター、保健所、各保護団体、弁護士や消費生活センターなどの専門機関に必ずご確認ください。本記事の情報を用いて生じた損害について、当サイトは責任を負いかねます。
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参考文献
- 環境省|犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況
- 環境省|自治体の取組事例(返還・譲渡の推進)
- 環境省|動物愛護管理法における引取り制度に関する資料(PDF)
- e-Gov法令検索|動物の愛護及び管理に関する法律
- 公益財団法人 動物環境・福祉協会Eva|データで見る動物たちの現状
- PEACE|動物愛護管理法改正・引取り拒否について
- アイムペットサービス|ペットを飼えなくなったら
- anifare|飼えなくなった犬のご相談
- NPO法人 人と動物の共生センター|ペット後見事業
- NPO法人 With Vets|譲渡の流れ
- 公益社団法人 日本動物福祉協会|里親募集情報
- ペットのおうち|里親募集掲示板
- わんちゃんホンポ|里親詐欺の見分け方と対策
- 法律事務所リベロ|里親詐欺の手口と被害時の対応
- 国民生活センター|ペットの購入・飼育に関するトラブル(PDF)
- 多摩市100人委員会|高齢者とペットに関する調査報告(PDF)
- 日本都市センター|多頭飼育崩壊に関する報告(PDF)
