「介護施設に入ることになったら、この子はどうなるんだろう」。愛犬と暮らす高齢の方やそのご家族にとって、これは老後の住まい選びの中でもとりわけ切実な悩みではないでしょうか。長年連れ添った家族の一員である犬を手放すという選択は、精神的な負担が大きいだけでなく、ペットロスによる心身の不調につながることも指摘されています。実は近年、ペットと一緒に入居できる高齢者施設は少しずつ増えてきています。ただし数は決して多くなく、施設ごとに条件も大きく異なるのが実情です。この記事では、ペットと入居できる施設の種類、入居条件、費用相場、そして具体的な探し方と入居後の現実的な注意点まで詳しく解説します。

ペットと一緒に入居できる施設の種類
高齢者向けの住まいには複数の種類がありますが、ペットとの同居を認めている施設は全体のごく一部にとどまります。ロイヤル介護の調査では、ペット受け入れが可能な施設は高齢者施設全体の約5%程度とされており、希望のエリア・条件で見つけるのは簡単ではありません。まずは主な施設種別とペット可の傾向を押さえておきましょう。
| 施設の種類 | ペット可の傾向 | 特徴 |
| 自立型・介護付き有料老人ホーム | 全体の1〜2%程度と希少 | 介護サービス付きだがペット可施設は極めて少ない |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 比較的見つけやすい | 自立〜要介護まで幅広く対応、賃貸借契約が基本 |
| シニア向け分譲マンション | 物件による | 購入型のため費用は高額になりやすい |
| 特別養護老人ホーム(特養)などの公的施設 | 原則不可 | 全国で対応しているのはごく一部の例外的な施設のみ |
中でも狙い目とされるのがサービス付き高齢者向け住宅です。自立している方から要介護の方まで幅広く入居でき、施設によっては共用の足洗い場やペット用水飲み場など、犬と暮らすための設備を整えているところもあります。一方、介護付き有料老人ホームはケアスル介護の調査によると全4,066件中わずか64件(1.6%)しかペット受け入れをしておらず、希望条件での物件探しには時間がかかることを覚悟しておく必要があります。

特養など公的施設の現実
特別養護老人ホームをはじめとする公的な介護施設では、原則としてペットの持ち込みは禁止されています。全国的に見ても犬猫との同居に対応している特養はごく一部の例外的な存在にとどまり、代表例として神奈川県の「さくらの里山科」が知られています。同施設ではペット対応ユニットを設け、入居者が連れてきた犬猫と保護された動物が一緒に暮らせる環境を整えており、職員やボランティアが1日2回の散歩を担当するなど、手厚い体制を敷いています。ただし、これはあくまで全国的に見ても稀な取り組みであり、「公的施設ならペットと暮らせる」という前提で探すのは現実的ではない点は理解しておきましょう。
入居条件の具体的なポイント
「ペット相談可」と表記されていても、実際の受け入れ条件は施設ごとに細かく定められています。見学・問い合わせの前に、以下のポイントを確認しておくと話がスムーズです。
- 対応できるペットは犬・猫が一般的で、原則1匹までとする施設が多い
- 体重10kg超の中型・大型犬は受け入れ不可としている施設が多数を占める(体長70cm以下など独自基準を設ける施設もある)
- 入居時に狂犬病予防注射証明書、混合ワクチン接種証明書、獣医師による健康診断書の提出が必須
- 入居後も年1回程度の定期健診の継続が求められる
- 共用部分(廊下・食堂・エレベーターなど)では抱っこするか、専用のケージ・カート・移動ボックスでの移動が原則
- 問題行動(吠え癖・咬み癖など)があるペットは入居を断られる場合がある
- 飼育者が亡くなった場合や飼育困難になった場合、身元引受人がペットを引き取る誓約を求められることが多い

費用相場
ペット可施設の費用は、施設の種類やペットの管理体制によって大きく変わります。一般的な傾向として、通常の入居費用に加えてペット関連の費用が上乗せされる点を押さえておきましょう。
| 施設タイプ | 入居時金の目安 | 月額費用の目安 |
| サービス付き高齢者向け住宅(ペット共生型) | 0〜60.6万円 | 12〜51.1万円 |
| 介護付き有料老人ホーム(ペット可) | 施設により幅が大きい | 平均約24.4万円(ペット不可より1.2万円ほど高め) |
これに加えて、動物管理費(月額)、入居時の保証金、退去時の居室原状回復費用が別途発生するケースが一般的です。ペットの体格や犬種によって管理費が変わる施設もあるため、契約前に「何にいくらかかるのか」を書面で確認しておくことが欠かせません。
具体的な探し方のステップ
ペット可施設は掲載件数自体が少ないため、闇雲に探すと時間ばかりかかってしまいます。次のステップで進めると効率的です。
- 介護施設専門の検索ポータルサイトで「ペット相談可」条件で絞り込み検索をする
- 気になる施設が見つかったら、犬種・サイズ・頭数の制限を運営事業者に直接確認する
- 老人ホーム紹介の相談窓口に、希望条件(エリア・予算・ペットの種類やサイズ)を具体的に伝える
- 複数施設をリストアップし、重要事項説明書でサービス内容・料金・スタッフ体制を比較する
- 実際に見学し、ペットが過ごせるスペースやほかの入居者への配慮がどうなっているかを自分の目で確認する

ペット可施設は空室が出てもすぐに埋まってしまうことが少なくありません。「入居を検討し始めたらすぐに情報収集を始める」くらいの心構えでいるとよいでしょう。
入居後に直面しやすい現実的な注意点
「ペット可」と聞くと安心してしまいがちですが、入居後の現実には事前によく理解しておくべき点がいくつかあります。
- 多くの施設では、スタッフが散歩や動物病院への送迎まで対応してくれるわけではない。日々の世話は基本的に飼い主自身が行う前提になっている
- 介護度が上がって自分での世話が難しくなった場合、家族の協力やペットシッターの利用が必要になる
- 他の入居者の中にはペットが苦手な方やアレルギーを持つ方もいるため、共用部での配慮が徹底されている施設かどうかは見学時にしっかり確認する
- ペットが先に旅立った場合や、飼い主が亡くなった場合の対応(身元引受人による引き取りなど)を事前に取り決めておく必要がある
- 職員の人手不足などにより、契約当初は手厚かったサポート体制が変わることもあるため、定期的な情報確認が望ましい
「ペットと一緒に暮らせる」という安心感の裏側には、飼い主自身または家族が継続的にお世話を担う体制づくりが欠かせません。入居前に、いざというときに頼れる家族・友人・ペットシッターの候補を考えておくと、より安心して新生活をスタートできます。
施設での暮らしに役立つグッズ
小型犬用ペットカート
共用部分の移動時に求められる「ケージ・カートでの移動」ルールに対応できるアイテムです。押して歩けるタイプなら、飼い主の体への負担も軽減できます。足腰に不安がある方の施設内移動サポートにもおすすめです。
参考価格:¥8,000〜¥20,000
ソフトキャリーバッグ
エレベーターや食堂など、抱っこでの移動が難しい場面で活躍する軽量タイプのキャリーです。通院や外出時の持ち運びにも便利で、犬にとっても落ち着ける居場所になります。
参考価格:¥3,000〜¥9,000
ワクチン証明書・健康手帳ケース
入居時や年次更新で提出を求められる予防接種証明書・健康診断書をまとめて管理できるケースです。書類の劣化や紛失を防ぎ、施設スタッフへの提示もスムーズになります。
参考価格:¥1,000〜¥3,000

サービス付き高齢者向け住宅と介護付き有料老人ホーム、どちらを選ぶべきか
ペットとの入居を考えるとき、選択肢の中心になりやすいのがサービス付き高齢者向け住宅と介護付き有料老人ホームです。両者は仕組みが異なるため、自分の状況に合わせて選ぶ視点を持っておくと迷いにくくなります。サービス付き高齢者向け住宅は賃貸借契約が基本で、比較的自立度の高い方に向いており、ペット可の物件数もこちらの方が探しやすい傾向にあります。一方、介護付き有料老人ホームは施設内で介護サービスを一体的に受けられる分、ペット受け入れ実績のある施設は全国でもごくわずかです。今は自立していても将来的に介護度が上がる可能性を考えると、「入居時点の自立度」だけでなく「将来介護が必要になったときにペットとどう暮らし続けられるか」まで見据えて選ぶことが大切です。迷ったら、老人ホーム紹介の相談窓口で自分と愛犬の状況を伝え、両方のタイプを比較しながら提案してもらうとよいでしょう。
よくある質問
Q. 大型犬でも一緒に入居できる施設はありますか
多くのペット可施設は小型犬・猫を対象としており、体重10kg超の中型・大型犬は受け入れ不可としているところが大半です。ただし、体長など独自の基準で例外的に一部の大型犬種を認めている施設も存在するため、犬種・体重・体高を具体的に伝えたうえで個別に問い合わせることをおすすめします。
Q. 自分で世話ができなくなったらペットはどうなりますか
施設スタッフが日常的な散歩や通院の送迎まで担うケースは多くありません。介護度が上がって自分で世話をすることが難しくなった場合に備え、家族や親族、あるいはペットシッターなど、代わりに世話を頼める相手をあらかじめ決めておくことが重要です。多くの施設では、飼育者が亡くなった際に身元引受人がペットを引き取る旨の誓約を入居時に交わします。
Q. ペット可の施設は他の入居者とのトラブルが心配です
ペットが苦手な方やアレルギーを持つ方への配慮として、共用部分では抱っこやケージ・カートでの移動を義務付けている施設がほとんどです。見学の際には、実際にどのようなルール運用がされているか、他の入居者との動線がどう分けられているかを具体的に確認しておくと安心です。
まとめ
ペットと一緒に入居できる高齢者施設は着実に増えてきているものの、全体で見ればまだごく一部にとどまり、犬種・サイズ・頭数の制限や、書類提出、共用部でのルールなど、確認すべき点は多岐にわたります。費用面でも通常の入居費用に加えて動物管理費などが上乗せされることが一般的です。何より大切なのは、「ペット可」の看板だけで安心せず、日々の世話を誰がどう担うのかまで含めて、入居前に具体的にイメージしておくことです。早めの情報収集と複数施設の比較検討で、愛犬と穏やかに過ごせる住まいを見つけてください。
参考文献
- ペットと一緒に入居できる老人ホーム おすすめ14選!|ロイヤル介護
- ペットと住める有料老人ホームの特集|LIFULL 介護
- 全国のペット・犬・猫と暮らせるサービス付き高齢者向け住宅一覧|みんなの介護
- 介護付き有料老人ホームでペット可の施設はある?|ケアスル介護
- 全国でも珍しい!ペットと暮らせる特別養護老人ホーム(さくらの里山科)取材レポート|LIFULL 介護
- 老人ホームを探したい!相談窓口はどこがいい?|LIFULL 介護
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の施設の入居可否や条件を保証するものではありません。ペット同居に関する条件・費用は施設により大きく異なり、変更される場合もあります。実際の入居検討にあたっては、必ず各施設および老人ホーム紹介の専門相談窓口に直接お問い合わせのうえ、最新の情報をご確認ください。
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