犬の子宮蓄膿症の症状と緊急性│避妊手術の重要性

犬のケア
子宮蓄膿症は、未避妊のメス犬に発症する命に関わる緊急疾患です! 7歳以上の未避妊犬では発症率が約30〜66%と非常に高く、発見が遅れると数時間〜数日で命を落とす危険性があります。この記事では、初期症状チェックリスト、閉鎖型・開放型の違い、診断方法、緊急手術の必要性、避妊手術による100%予防法まで、メス犬の飼い主が絶対に知っておくべき情報を徹底解説します。

🚨 今すぐ動物病院へ!緊急症状チェック

以下の症状が1つでもあれば、数時間〜半日以内に受診が必要です:

  • ぐったりして動かない、立ち上がれない
  • 嘔吐を繰り返す、何度も吐く
  • お腹が急に膨らんできた、触ると痛がる
  • 陰部から膿(黄色・緑色・茶色のドロドロした液体)が出る
  • 発熱(耳が熱い)または低体温(耳が冷たい)
  • 呼吸が速い、荒い
  • 歯茎が白っぽい、青白い(貧血・ショック症状)

⏰ 時間との勝負です!夜間・休日でも救急病院へ! 子宮破裂・敗血症・ショック状態に陥ると、手術しても救命率が大幅に低下します。

子宮蓄膿症とは?なぜ命に関わるのか

子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう / Pyometra)とは、子宮内に細菌感染により膿が溜まり、全身状態が急速に悪化する病気です。未避妊のメス犬に特有の疾患で、放置すれば数日以内に死亡する可能性が高い緊急疾患として知られています。

発症メカニズム

  1. 発情期後のホルモン変化:発情後、黄体ホルモン(プロゲステロン)が子宮内膜を厚くし、子宮頸管を閉鎖
  2. 細菌侵入:閉鎖した子宮内に、膣から細菌(大腸菌などが多い)が侵入
  3. 膿の蓄積:免疫力低下により細菌が増殖、子宮内に膿が大量に溜まる
  4. 毒素放出:細菌の出す毒素(エンドトキシン)が血液中に流れ、敗血症・多臓器不全を引き起こす
  5. 子宮破裂リスク:膿が溜まりすぎると子宮が破裂 → 致死性腹膜炎

なぜ死に至るのか

  • 敗血症:細菌毒素が全身に回り、血圧低下・臓器障害
  • 急性腎不全:毒素により腎臓がダメージを受ける(多飲多尿の原因)
  • 脱水・ショック:嘔吐・食欲不振で脱水 → 循環不全
  • 腹膜炎:子宮破裂で膿が腹腔内に漏出 → 数時間で死亡

適切な治療(緊急手術)を行っても、発見が遅れた場合の死亡率は5〜10%。早期発見なら死亡率1%未満まで下がります。

子宮蓄膿症の症状【初期〜末期チェックリスト】

子宮蓄膿症は初期症状が分かりにくいのが特徴です。以下の症状チェックリストで愛犬の状態を確認しましょう。

初期症状(発症〜数日)

  • 多飲多尿:水をいつもより多く飲む、おしっこの量・回数が増える(最も早期に出る症状)
  • 元気消失:寝てばかり、遊びたがらない、散歩を嫌がる
  • 食欲低下:ごはんを残す、または全く食べない
  • 軽度の嘔吐:1〜2回吐く
  • 発熱:耳・体が熱い(39.5℃以上)
  • 外陰部の腫大:陰部が少し膨らむ(分かりにくいこともあり)

中期〜末期症状(数日〜1週間)

  • 陰部から膿排出:黄色・緑色・茶色のドロドロした液体が出る(開放型の場合のみ)
  • 腹部膨満:お腹が風船のように膨らむ(閉鎖型で顕著)
  • 腹痛:お腹を触ると痛がる、嫌がる
  • 繰り返す嘔吐:何度も吐く、黄色い液体を吐く
  • 下痢:軟便〜水様便
  • ぐったり:立てない、歩けない、反応が鈍い
  • 呼吸困難:呼吸が速い、荒い、口を開けて呼吸
  • 低体温:耳・四肢が冷たい(ショック状態)
  • 歯茎の色異常:白っぽい、青白い(貧血・ショック)

開放型 vs 閉鎖型:見逃しやすさの違い

タイプ 特徴 見逃しやすさ
開放型 子宮頸管が開いており、陰部から膿が排出される ★☆☆ 膿が目視できるため早期発見しやすい
閉鎖型 子宮頸管が閉じており、膿が子宮内に溜まり続ける ★★★ 非常に危険! 膿が見えず、腹部膨満まで気づかないことが多い。子宮破裂リスク高

注意:開放型でも、排出量が少なければ見逃します。また、「発情出血かな?」と誤認することも。発情終了後1〜2ヶ月に陰部から分泌物があれば、子宮蓄膿症を疑いましょう。

発症しやすい犬の特徴【ハイリスク群】

  • 未避妊のメス犬:避妊手術していないすべてのメス犬がリスクあり
  • 年齢:7歳以上の中〜高齢犬。特に9歳以上では発症率66%という報告も
  • 発情後1〜2ヶ月:黄体期に発症しやすい。発情終了後は特に注意
  • 出産経験:未経産犬、または出産後長期間経過している犬
  • 過去の偽妊娠:偽妊娠を繰り返した犬はリスク高
  • ホルモン剤使用歴:発情抑制剤(プロゲステロン製剤)投与歴がある犬

統計データ:

  • 未避妊犬が10歳までに子宮蓄膿症を発症するリスク:約25%
  • 7歳以上の未避妊犬の発症率:約30%
  • 9歳以上の未避妊犬の発症率:約66%

つまり、未避妊のまま10歳を迎えた犬の4頭に1頭が子宮蓄膿症を発症します。避妊手術の重要性が分かります。

診断方法【動物病院での検査】

子宮蓄膿症が疑われる場合、動物病院では以下の検査を迅速に行います。

検査項目 内容と目的
問診 年齢、避妊手術の有無、最終発情時期、症状出現時期、陰部からの分泌物の有無を確認
身体検査 体温測定、腹部触診(子宮の腫大確認)、歯茎の色、脱水の有無、心拍数・呼吸数
血液検査 白血球数増加(感染の証拠)、炎症マーカー(CRP)上昇、腎機能低下(BUN・Cre上昇)、貧血の有無
超音波検査
(エコー)
最も重要な検査。子宮内に液体(膿)が溜まっている様子を直接確認。開放型・閉鎖型どちらも診断可能。リアルタイム画像で子宮の太さ・内容物を観察
レントゲン検査 子宮の拡張・腹腔内の異常を確認。ただし開放型では見えにくいことも。エコーと併用
血液凝固検査 重症例では、DIC(播種性血管内凝固症候群)リスクあり。手術前に確認

診断所要時間:問診〜検査〜診断確定まで30分〜1時間程度。緊急性が高いため、迅速に検査が進められます。

治療法【緊急手術が第一選択】

①外科手術(卵巣子宮全摘出術)★推奨

子宮蓄膿症の唯一確実な治療法は、緊急手術による卵巣・子宮の完全摘出です。

手術の内容

全身麻酔下で開腹し、膿が溜まった子宮と卵巣を丸ごと摘出します。通常の避妊手術と同じ術式ですが、子宮が巨大化・脆弱化しているため難易度は高く、手術時間も長くなります(1〜2時間)。

手術のタイミング:診断確定後、できるだけ早く(数時間〜当日中)。ただし、ショック状態の場合は数時間〜半日の点滴・輸液で状態を安定させてから手術(術前安定化)。

手術費用と入院期間

  • 手術費用:10〜25万円(病院・犬のサイズ・重症度により変動)
  • 内訳:術前検査(血液・画像) 1〜3万円、手術料 8〜15万円、入院費(3〜5日) 3〜7万円、術後薬 5,000〜1万円
  • 入院期間:3〜5日(順調な場合)。重症例は1〜2週間
  • 成功率:早期発見・早期手術なら95〜99%。末期・ショック状態では60〜70%に低下

②内科治療(薬物療法)×非推奨

抗生物質・ホルモン剤投与による保存的治療も理論上可能ですが、推奨されません

  • 理由:①再発率が非常に高い(50〜70%)、②完治しない、③治療中に急変・死亡リスク、④次回発情後に再発
  • 適応:超高齢犬・重篤な心疾患などで麻酔リスクが極めて高く、飼い主が手術を希望しない場合のみ
  • 結論:命を救うには手術一択です

避妊手術による100%予防【最も重要な対策】

子宮蓄膿症は、避妊手術(卵巣子宮摘出術)によってほぼ100%予防できます。子宮を摘出してしまえば、子宮蓄膿症は物理的に発症不可能です。

避妊手術の予防効果

子宮蓄膿症の予防率:100%

さらに、以下の病気も同時に予防:

  • 乳腺腫瘍:初回発情前の避妊で発症率0.5%、1回目の発情後で8%、2回目の発情後で26%(未避妊は約50%)
  • 卵巣腫瘍
  • 子宮内膜炎
  • 偽妊娠

避妊手術の適切な時期

時期 メリット・デメリット
初回発情前
(生後5〜6ヶ月)
最も推奨。乳腺腫瘍リスクを0.5%まで下げられる。手術も簡単で回復早い
1回目の発情後
(生後8〜12ヶ月)
乳腺腫瘍リスクは8%に上昇するが、まだ予防効果大。子宮蓄膿症は100%予防可能
2回目の発情後
(生後1.5〜2年)
乳腺腫瘍リスク26%。子宮蓄膿症は100%予防。「もう遅い」わけではない
成犬〜シニア期
(3歳以降)
乳腺腫瘍予防効果はほぼ無くなるが、子宮蓄膿症は100%予防。高齢犬でも避妊手術は有効(麻酔リスクは要相談)

結論:繁殖予定がなければ、生後5〜6ヶ月での避妊手術が最適。すでに成犬・シニア期でも、子宮蓄膿症予防のため避妊手術を検討する価値は十分にあります。

避妊手術の費用と回復期間

  • 手術費用:3〜8万円(小型犬は安め、大型犬は高め。病院により変動)
  • 入院期間:日帰り〜1泊(翌朝退院が一般的)
  • 抜糸:術後10〜14日目
  • 回復期間:2週間程度で通常生活に戻れる

緊急手術(子宮蓄膿症発症後)の費用10〜25万円と比較すると、予防的避妊手術は圧倒的に経済的です。

「もう高齢だから避妊手術は遅い?」→そんなことありません!

7歳、8歳、9歳…と年齢を重ねた未避妊犬でも、避妊手術は決して「遅い」わけではありません

  • 理由:子宮蓄膿症の発症リスクは年齢とともに上昇し続ける。7歳以上で30%、9歳以上で66%
  • 避妊手術のメリット:年齢に関わらず、子宮を摘出すれば子宮蓄膿症は100%予防
  • 緊急手術との比較:予防的避妊手術(健康時)の方が、緊急手術(発症後・全身状態悪化時)より麻酔リスク・死亡率ともに圧倒的に低い

高齢犬の避妊手術:

  • 術前に血液検査・心臓エコーなどで麻酔リスク評価
  • 健康状態が良好なら、10歳、11歳でも手術可能
  • かかりつけ獣医師に「子宮蓄膿症予防のための避妊手術を検討したい」と相談を

よくある質問(FAQ)

子宮蓄膿症の症状が出てから、どのくらいで死に至りますか?

数日〜1週間以内が多いです。閉鎖型で子宮破裂を起こすと、数時間〜24時間以内に死亡することも。症状に気づいたら、数時間〜半日以内に動物病院を受診してください。「明日まで様子を見よう」は命取りです。

陰部から膿が出ていないので大丈夫ですか?

危険です! 閉鎖型子宮蓄膿症は膿が外に出ないため、見た目で気づきにくく、開放型より重症化しやすいです。多飲多尿、元気消失、食欲低下などの症状があれば、膿が見えなくても即受診してください。

手術しないで薬で治せませんか?

抗生物質・ホルモン剤による内科治療も理論上可能ですが、推奨されません。再発率50〜70%と非常に高く、治療中に急変・死亡するリスクもあります。命を救うには緊急手術が唯一確実な治療法です。超高齢・重篤な心疾患で麻酔リスクが極めて高い場合のみ、内科治療を選択肢として検討します。

手術の成功率はどのくらいですか?

早期発見・早期手術なら95〜99%です。ただし、発見が遅れてショック状態・多臓器不全に陥っている場合は60〜70%に低下します。子宮破裂・重度の腹膜炎があるとさらに低下。早期発見がいかに重要か分かります。

避妊手術済みでも子宮蓄膿症になりますか?

ほぼなりません。卵巣・子宮を完全に摘出していれば、子宮蓄膿症は物理的に発症不可能です(発症率ほぼ0%)。ただし、極めて稀に、手術で子宮の一部が残存していた場合(子宮断端蓄膿症)、そこに膿が溜まることがあります。これは手術ミスであり、通常は起こりません。

7歳ですが、今から避妊手術しても意味ありますか?

大いに意味があります! 7歳以上の未避妊犬の子宮蓄膿症発症率は約30%、9歳以上では約66%。つまり、今避妊手術すれば、今後数年間で発症するはずだった子宮蓄膿症を100%予防できます。健康時の予防的避妊手術の方が、発症後の緊急手術より安全です。かかりつけ獣医師に相談してください。

発情直後なのですが、避妊手術できますか?

発情中・発情直後(1〜2ヶ月以内)は、子宮や血管が充血しており出血リスクが高いため、多くの動物病院では手術を避けることを推奨します。発情終了後2〜3ヶ月経ってから手術が理想。ただし、子宮蓄膿症を疑う症状がある場合は、発情直後でも緊急手術を行います。

避妊手術すると太りやすくなると聞きましたが…

ホルモンバランスの変化により、基礎代謝が約10〜20%低下するため、術前と同じ食事量だと太りやすくなります。しかし、フード量を10〜20%減らす、または低カロリーフードに切り替えることで肥満は予防可能。避妊手術による健康メリット(子宮蓄膿症・乳腺腫瘍予防)は、体重管理の手間を上回ります。

まとめ:子宮蓄膿症から愛犬を守るために

  • 子宮蓄膿症は命に関わる緊急疾患:数日〜1週間で死に至る可能性
  • 7歳以上の未避妊犬の発症率30〜66%:非常に高リスク
  • 初期症状:多飲多尿、元気消失、食欲低下。陰部から膿が見えないことも(閉鎖型)
  • 緊急症状:ぐったり、繰り返す嘔吐、腹部膨満、膿排出、呼吸困難 → 数時間〜半日以内に受診必須
  • 診断:血液検査、超音波エコー、レントゲンで確定。所要時間30分〜1時間
  • 治療:緊急手術(卵巣子宮全摘出)が唯一確実。早期発見なら成功率95〜99%
  • 手術費用:10〜25万円。入院3〜5日
  • 100%予防法:避妊手術(卵巣子宮摘出)。生後5〜6ヶ月が最適時期
  • 高齢犬でも避妊手術は有効:7歳、8歳、9歳でも遅くない。健康時の予防手術の方が安全
  • 避妊手術費用:3〜8万円。緊急手術より圧倒的に安全・経済的

子宮蓄膿症は、避妊手術で100%予防できる病気です。繁殖予定がなければ、早めの避妊手術を強く推奨します。すでに成犬・シニア期の未避妊犬をお持ちの方は、今からでも遅くありません。かかりつけ獣医師に「子宮蓄膿症予防のための避妊手術」を相談し、愛犬の命を守りましょう。少しでも気になる症状があれば、迷わず動物病院へ!

参考文献・データ出典

  1. 池田動物病院『犬の子宮蓄膿症:放置は危険!症状・治療・手術判断の目安』
    https://ikedaanihos.com/dog-pyometra/
  2. Wanpedia『避妊手術をさせていない子は要注意!犬の子宮蓄膿症』
    https://wanpedia.com/disease-pyometra/
  3. もりやま犬と猫の病院『犬の子宮蓄膿症〜早期発見と予防が鍵〜』
    https://moriyama1299.com/topics/
  4. アースペットクリニック『獣医師が解説:犬の子宮蓄膿症』
    https://earth-ah.com/blog/article.html?page=72
  5. オリバ犬と猫のクリニック『犬猫の子宮蓄膿症の症状と原因、治療法』
    https://oliba-dog-and-cat-clinic.jp/2022/07/940/
  6. 相川動物医療センター『子宮蓄膿症』
    https://aikawavmc.com/specialize/?specializeId=295
  7. PS保険『犬の子宮蓄膿症の症状と原因、治療法について』
    https://pshoken.co.jp/note_dog/disease_dog/case088.html
  8. 丹沢の森どうぶつ病院『子宮蓄膿症ってご存じですか?』
    http://tanzawa-vet.com/2025/08/09/
  9. 光が丘動物病院『今からでも避妊手術した方が良いの?』
    https://www.hikarigaoka.net/staffblog/post-3185/
  10. エルマー動物クリニック『陰部からの膿:犬の子宮蓄膿症は命に関わる緊急疾患』
    https://www.elmani.jp/archive/16086/
  11. 葉山まほろば動物病院『子宮蓄膿症の経過』
    https://www.hayama-mahoroba.com/journal/207/
  12. 日本獣医師会『犬の生殖器疾患ガイドライン』
  13. American College of Veterinary Internal Medicine『Pyometra in Dogs and Cats』
  14. 日本小動物獣医師会『避妊・去勢手術の適切な時期と予防効果』
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