散歩中にしゃがむ回数が増えた。おしっこの色がなんか違う気がする。量がいつもと変わった——そんな小さな変化が、愛犬の体からのサインであることがあります。おしっこは腎臓・膀胱・肝臓・ホルモン系など、多くの臓器の状態を映す窓口です。この記事では、色・頻度・量・透明度の4つの視点から、具体的なチェック方法と受診タイミングの目安を解説します。
まず「正常なおしっこ」の基準を頭に入れる
「いつもと違う」に気づくには、正常の状態を知っておくことが前提です。色・回数・量、それぞれの基準を確認しましょう。
色は薄い黄色が目安
健康な犬のおしっこは薄い黄色です。朝一番や運動後など一時的に濃くなるのは問題ありません。水分をたっぷり飲んだあとはほぼ透明に近くなることもあります。食事の内容や飲水量で多少変動するのは正常の範囲内です。
回数は年齢によって変わる
| 年齢 | 1日の目安回数 | 備考 |
|---|---|---|
| 子犬(〜1歳未満) | 7〜10回 | 膀胱が小さく短時間で満杯に |
| 成犬(1〜7歳) | 3〜5回 | マーキング行動は除く |
| 高齢犬(7歳以上) | 5〜6回 | 膀胱筋力の低下で頻度が増える |
回数そのものより、「いつもと比べて変化があるか」が判断の軸です。急に増えた・急に減ったという変化を見逃さないようにしましょう。
量は体重で目安が変わる
正常な1日の尿量は体重1kgあたり25〜47ml程度です。5kgの犬なら125〜235ml、10kgなら250〜470mlが目安。屋外でしかおしっこしない子は量を測りにくいですが、飲水量を計測することで間接的に把握できます。正常な飲水量は体重1kgあたり1日63〜73mlです。
飲水量の計り方:500mlのペットボトルに水を入れて与えるだけ。翌朝の残量を差し引けば1日の飲水量がわかります。ドライフードの水分量まで厳密に計算する必要はありません。
おしっこの色でわかること|色別チェックガイド
| 色 | 考えられる状態・病気 | 対応 |
|---|---|---|
| 薄い黄色 | 正常 | 問題なし |
| 濃い黄色〜山吹色 | 水分不足・ビリルビン尿(肝炎・胆のう疾患・黄疸) | 続くなら受診を |
| ほぼ透明・無色 | 多飲多尿(糖尿病・クッシング症候群・慢性腎臓病・尿崩症) | 受診を検討 |
| ピンク〜赤色(血尿) | 膀胱炎・尿路結石・腎臓疾患・腫瘍 | 早急に受診 |
| 茶褐色・赤ワイン色 | 腎臓など深部からの出血・溶血(タマネギ中毒など) | 今すぐ受診 |
| 真っ黒 | 血液成分の変性・重篤な疾患 | 緊急受診 |
| 白く濁っている | 膿尿(膀胱炎・前立腺炎) | 早急に受診 |
| キラキラ光る | 尿路結石の結晶 | 受診を検討 |
注意したいのは「時間が経つと色が変わる」点です。ペットシーツの上のおしっこは時間経過で変色します。直接排尿しているところを確認するか、採尿直後に観察するようにしてください。
血尿(赤・ピンク)は発情出血と混同しやすい
未避妊のメスの場合、発情期の出血が尿に混じって赤く見えることがあります。ただし、外陰部の腫れや落ち着きのなさなど発情の兆候がない状態での赤いおしっこは病気のサインです。見分けがつかないときは動物病院に相談するのが確実です。
頻度・量の変化が示すサイン
頻尿(何度もトイレに行くが少量しか出ない)
おしっこの姿勢を何度もとるのに少量しか出ない——これは泌尿器トラブルの典型的なサインです。
頻尿で考えられる主な病気
- 膀胱炎:細菌感染が多く、解剖学的にメスに発症しやすい。血尿・排尿痛を伴うことも。慢性化しやすい。
- 尿路結石:腎臓から尿道のどこかに結石ができる。完全に詰まると命に関わる。
- 前立腺肥大症:去勢していないシニアのオスに多い。進行すると排便困難も伴う。
- 腫瘍・ポリープ:膀胱や尿道の腫瘍で尿の流れが妨げられる。高齢犬で要注意。
多飲多尿(大量に飲んで大量に出す)
水をよく飲むようになった、おしっこの量が増えた——この組み合わせは「多飲多尿」と呼ばれ、ホルモン系や腎臓の病気を示すことがあります。
多飲多尿で考えられる主な病気
- 慢性腎臓病:腎機能の低下でおしっこを濃縮できなくなる。初期は無症状なことが多く、発見が遅れやすい。
- 糖尿病:尿に糖分が含まれ水分の再吸収が困難に。食欲があるのに体重が落ちる症状も。
- クッシング症候群:コルチゾール過剰分泌。腹部膨満・脱毛・皮膚の薄化を伴う。プードルやダックスに多い。
- 子宮蓄膿症(未避妊メス):子宮内の膿が毒素として作用し多尿に。発熱・陰部からの分泌物も見られる。
体重1kgあたり1日100ml以上水を飲んでいたら多飲の目安です。これらの病気は初期段階では無症状のものが多く、血液検査でも数値に出にくいケースがあります。気になる変化があれば早めに受診してください。

おしっこが出ない・ほとんど出ない
丸1日おしっこが出ない場合は緊急事態です。老廃物や毒素が体内に蓄積し、尿毒症(嘔吐・けいれん・昏睡)へ進行します。2日以上おしっこが出ない状態は死に至る可能性があります。姿勢をとっても出ない、ポタポタとしか出ないときはすぐに動物病院へ連絡してください。
これが出たら今すぐ受診|危険サインリスト
以下のサインが1つでも見られたら当日中に動物病院へ
- おしっこが全く出ない(尿閉)——特にオスは一刻を争う
- 尿の色が真っ赤・真っ黒・茶褐色
- 排尿時に鳴く・明らかに痛そうにしている
- 血尿と同時に元気がない・食欲がない
- 急に大量の水を飲むようになった
- 未避妊メスで陰部から膿のような分泌物が出ている
- おしっこから強い悪臭がする
「元気はあるからもう少し様子を見よう」と判断して受診を遅らせると、症状が急速に悪化するケースがあります。特に尿閉は夜間でも救急対応の動物病院を探してください。
受診前にできる準備:排尿直後のおしっこを清潔な容器(醤油さしなど)に採取して持参すると、その場で尿検査が可能です。ペットシーツの写真をスマートフォンで撮影しておくことも診断に役立ちます。
毎日のチェックを続けるコツ

散歩でしかおしっこをしない子は、異変に気づくのが遅れがちです。室内にもトイレを用意して、少なくとも1日1回は自宅でおしっこをさせる習慣をつけましょう。
- 白いペットシーツを使う→色の変化が見えやすい
- 排尿中に直接確認する→シーツの変色による誤認を防げる
- 1日の回数を数えておく→「増えた」「減った」に気づける
- 飲水量をペットボトルで管理する→多飲の早期発見につながる
7歳未満は年1回、7歳以上は半年に1回の健康診断で尿検査を受けると、自宅では把握しにくいpH・尿比重・結晶の有無まで確認できます。慢性腎臓病やクッシング症候群は中〜高齢犬で多く見られるため、シニア期に差し掛かったら受診間隔を短くするのが理にかなっています。
泌尿器トラブルを遠ざける生活習慣
泌尿器の健康を守るうえで、水分摂取量が最大の鍵です。尿が薄まることで結石のリスクが下がり、細菌を流し出す働きも高まります。
- 新鮮な水を常に用意する(冬は人肌に温めると飲みやすい)
- ウェットフードやドライフードのふやかしで食事からも水分補給
- トイレ環境を清潔に保つ(汚れたシーツはすぐ交換)
- 尿を長時間我慢させない(特に室内犬は適切な回数トイレへ誘導)
- タマネギ・チョコレートなど有毒な食品は犬の届かない場所へ
- メスの避妊手術・オスの去勢手術を検討する(子宮蓄膿症・前立腺疾患の予防)
泌尿器の健康をサポートするアイテム
泌尿器ケアに特化したフードや、もしものときのペット保険を準備しておくと安心です。
ロイヤルカナン ユリナリー S/O(犬用泌尿器ケア療法食)
尿のpHを調整し、ストルバイト・シュウ酸カルシウム結石の形成を抑制する療法食です。尿石症や膀胱炎を繰り返す犬に、獣医師の指示のもとで使われています。自己判断での長期使用は避け、処方後の定期検査と合わせて活用してください。
こんな子に:尿石症・膀胱炎を繰り返している犬(獣医師処方が前提)
FORZA10 リナール アクティウェット(泌尿器ケアウェットフード)
イタリア発のペットフードブランドが手がける泌尿器ケア向けウェットフードです。ウェットタイプのため、水を飲みたがらない愛犬の水分摂取量を食事から補えます。一般フードとして販売されていますが、気になる場合は動物病院で相談してから使い始めるのが確実です。
こんな子に:水分摂取が少なく尿路結石リスクが気になる犬
ペット保険(犬向け)
膀胱炎や尿石症は繰り返し通院が必要なケースが多く、慢性腎臓病になると長期的な治療費がかかります。アニコム損保の「どうぶつ健保ふぁみりぃ」はシェア15年連続No.1(富士経済調べ)で、提携動物病院では窓口で保険証を出すだけで清算できます。7歳を超えると加入できる保険が限られてくるため、若いうちから検討しておくのが現実的です。
こんな子に:泌尿器・慢性疾患リスクに備えたい全犬種の飼い主
参考文献
- ワンクォール|犬のおしっこがいつもと違う?回数の目安、量や色から考えられる病気は?(茂木千恵獣医師監修)
- KS Online(共立製薬)|おしっこは健康のバロメーター(石田卓夫獣医師監修)
- 動物医療センターPeco(渋谷・原宿)|犬の血尿は危険信号!考えられる原因と治療法
- キミおもい(エリエール・大王製紙)|犬のおしっこの回数の目安は?(松田唯獣医師監修)
- PS保険(ペットメディカルサポート)|犬の多飲多尿の原因とは?(獣医師解説)
- 国分寺ハートアニマルクリニック|犬の頻尿:考えられる原因と受診の目安
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医学的な診断・治療の代替となるものではありません。愛犬の体調に変化を感じたときは、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。
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