「愛犬と一緒に過ごせるカフェを開きたい」——そんな想いから開業を検討する人が増えています。ですが、ドッグカフェは通常の飲食店よりも準備すべき許可や設備基準が多く、「思っていたより費用がかかった」「保健所の基準を知らずに内装を決めてしまった」という声も少なくありません。
この記事では、ドッグカフェ・ペット同伴店を開業する際に必要な許可や資格、保健所審査で求められる設備基準、開業資金の目安、客単価から見た採算ラインまで、開業前に押さえておきたいポイントを整理します。

ドッグカフェの種類|「テラス同伴型」と「フル同伴型」の違い
ドッグカフェには法律上の明確な定義はなく、大きく2つのタイプに分かれます。1つは屋外テラス席のみ犬の同伴を認める「テラス同伴型」、もう1つは店内の客席まで犬を入店させる「フル同伴型」です。
テラス同伴型であれば、通常の飲食店営業許可の範囲で開業できるケースが多く、比較的ハードルは低めです。一方フル同伴型は、犬の抜け毛や体毛が調理スペースに入らないよう、厨房と客席をしっかり区切るなど、保健所からより厳格な設備基準を求められます。どちらの形態を目指すかによって、必要な投資額も許可申請の難易度も大きく変わってくるため、まず自分の店がどちらのタイプに当たるのかを最初に決めておくことが重要です。
開業に必要な許可・資格
ドッグカフェの開業そのものに専用の資格は存在しませんが、飲食店として営業するために複数の許可・届出が必要です。
| 必要な許可・資格 | 概要 |
|---|---|
| 飲食店営業許可 | 所轄保健所へ申請。ドッグカフェとして営業する旨を事前に伝え、施設基準を確認しておく必要がある |
| 食品衛生責任者 | 飲食店営業に必須の資格。講習会受講で取得可能。栄養士・調理師などの有資格者は講習の一部が免除される |
| 防火管理者 | 収容人数が30人以上になる施設では選任と消防署への届出が必要 |
| 第一種動物取扱業(展示) | 看板犬を置いたり、犬との触れ合いを提供したりする場合に登録が必要。動物取扱責任者を1名選任する |
| 個人事業の開業届 | 所轄税務署に提出。青色申告を行う場合は承認申請書もあわせて提出する |
犬用のフードやおやつをテイクアウト用に調理・販売する場合は、ペットフード安全法にもとづき農林水産省への届出も別途必要になります。提供するサービス内容によって必要な手続きが変わるため、開業計画の段階で漏れなく洗い出しておきましょう。

保健所審査で求められる主な設備基準
フル同伴型のドッグカフェを開業する場合、保健所の審査では通常の飲食店にはない独自の設備基準が確認されます。内装工事を始める前に、必ず物件の見取り図を持参して事前相談しておくことが失敗を防ぐポイントです。
- 厨房と客席の間に壁や扉などの明確な区切りがあること(オープンキッチンでの犬同伴は原則不可)
- 犬用メニューを提供する場合、人用とは別に調理設備・水回りを用意すること
- 客席に、排泄・嘔吐などがあった際にすぐ使える手洗い場を設置すること
- 店内に犬用トイレスペースは設置できないため、入店前の排泄を促す動線・案内を工夫すること
- 駐車場から店内までの動線で、近隣とのトラブルを避ける配慮をすること
これらの基準は自治体によって細部の運用が異なる場合があります。図面段階で保健所の窓口に相談し、内装工事の前に基準を満たせるか確認しておくと、工事後のやり直しを防げます。
開業資金の目安
一般的なカフェの開業資金は平均700万円(300万〜1,500万円)程度とされていますが、ドッグカフェの場合はここに犬用設備や区切り工事などの追加コストが上乗せされる点が特徴です。
| 項目 | 目安金額 | 補足 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 50万〜300万円 | 賃料の6〜10ヶ月分が目安 |
| 内装工事費(厨房・客席の区切りを含む) | 150万〜1,000万円 | 犬用設備を分けるほど高くなりやすい |
| 厨房機器・犬用食器スペース | 80万〜300万円 | 中古活用で圧縮できる場合もある |
| 運転資金(半年分目安) | 200万〜400万円 | 売上が安定するまでの人件費・仕入れに充てる |
資金調達は「自己資金3分の1+日本政策金融公庫の融資2分の1+運転資金の確保」という組み方が一般的です。小規模事業者持続化補助金など、開業時に活用できる補助金制度もあわせて確認しておくと、自己負担を抑えられる場合があります。

客単価・回転率から見る採算ライン
カフェ業態全体の業界平均値を見ると、客単価は800円〜2,000円(平均1,200円)、回転率は1.2〜3.5回/日(平均2回)、坪月商は平均15万円程度とされています。ドッグカフェはテーブル間隔を広く取る必要があり、通常のカフェより席数・回転率が下がりやすい傾向があるため、客単価をやや高めに設定するか、犬用メニューやグッズ販売で客単価を底上げする工夫が採算を取るポイントになります。
| 指標 | カフェ業界平均 |
|---|---|
| 客単価 | 1,200円前後 |
| 回転率 | 2回/日前後 |
| 原価率 | 35%前後 |
| 営業利益率 | 8%前後 |
ドッグカフェ特有のコストとして、清掃頻度の増加や犬用備品の補充、消臭対策なども運営コストに組み込んでおく必要があります。開業前の事業計画では、通常のカフェの数値をそのまま使わず、犬同伴による追加コストを織り込んで試算しておくことをおすすめします。
開業前に確認すべき条例・注意点
飲食店営業許可や動物取扱業登録は全国共通の制度ですが、細かな運用基準は自治体ごとに異なる場合があります。物件を決める前に、以下の点を所轄の保健所・自治体窓口へ確認しておきましょう。
- 建物の用途地域や条例で、ペット同伴の飲食店営業に制限がないか
- マンション・商業施設のテナントであれば、管理規約でペット同伴が許可されているか
- 近隣に住宅街がある場合、鳴き声やにおいに関する近隣トラブル対策
- 駐車場を利用する来店客が多い場合、排泄物処理などのマナー周知方法
保健所での確認と並行して、内装工事の契約前に物件の用途制限を調査しておくと、「工事後に営業許可が下りなかった」という最悪のケースを避けられます。

開業までの流れ
- コンセプト設計(テラス同伴型かフル同伴型か、客単価と席数を決める)
- 物件調査(用途地域・管理規約・保健所への事前相談)
- 資金計画・調達(自己資金、公庫融資、補助金の検討)
- 許認可・資格の準備(飲食店営業許可、食品衛生責任者、必要に応じて動物取扱業登録)
- 内装・設備工事(厨房と客席の区切り、手洗い場の設置など基準を満たす設計)
- 保健所の実地検査・営業許可の取得
- 開業届の提出、スタッフ採用、集客準備
この流れの中でも、③資金計画と④許認可の準備は同時並行で進めておくと、物件契約から開業までの期間を短縮しやすくなります。
開業時にそろえておきたい店舗設備
ドッグカフェの運営では、においや衛生面への配慮が集客の口コミにも直結します。開業準備の段階で検討しておきたい設備の一例を紹介します。
業務用ペット脱臭機
店内のペット臭・食品臭を同時にケアできる業務用の脱臭機です。客席スペースに設置しておくことで、来店客の第一印象を大きく左右するにおい対策になります。
こんな人向け:フル同伴型で開業予定の店舗オーナー
参考価格:2万円〜8万円程度
抗菌加工の店舗用床材保護シート
犬の爪による床の傷や滑りを防ぎつつ、拭き取り掃除がしやすい抗菌加工タイプのシートです。客席エリアの床材保護に活用できます。
こんな人向け:既存物件を居抜きで活用する開業予定者
参考価格:1平米あたり数千円程度
業務用ステンレス製ペット食器
傷がつきにくく煮沸消毒もしやすいステンレス製の食器は、犬用メニューを提供する店舗の衛生管理に向いています。人用食器と明確に区別できるデザインを選ぶのがポイントです。
こんな人向け:犬用フード・おやつメニューを提供予定の店舗
参考価格:1個あたり500円〜2,000円程度
まとめ
ドッグカフェの開業には専用資格こそ不要ですが、飲食店営業許可・食品衛生責任者に加え、犬同伴の形態によっては動物取扱業登録や独自の設備基準への対応が必要です。内装工事の前に保健所へ事前相談し、資金計画には犬同伴による追加コストを織り込んでおくことが、開業後のトラブルを防ぐ最大のポイントといえます。
参考文献
小林行政書士オフィス「ドッグカフェ【ペットと同伴できる飲食店】を開業するために必要な資格や手続きとは?」https://kobayashi-y.com/howto-dogcafe
ペットビジネスサポートセンター大阪「食品衛生法に基づく営業許可申請|飲食店・喫茶店併設」https://petbusiness.solide.biz/enlargement/cafe
飲食ビジネスナビ「カフェのビジネスモデル|開業資金・利益率・原価率を徹底解剖」https://insyoku-portal.jp/gyoutai/cafe
テナント工房「ドッグカフェの開業方法を解説!必要な資格や資金」https://www.tenantkoubou.com/blog/tips/column081
マネーフォワード「ドッグカフェを開業する方法は?必要な資格・届出や費用について解説!」https://biz.moneyforward.com/establish/basic/52725
免責事項
この記事は、ドッグカフェ・ペット同伴店の開業に関する一般的な情報を整理したものであり、開業を保証するものではありません。飲食店営業許可・食品衛生責任者・動物取扱業登録などの制度や自治体ごとの運用基準は変更される場合があるため、実際に開業を検討する際は、必ず所轄の保健所・税務署・消防署など公的機関の最新情報を確認し、必要に応じて行政書士など専門家にご相談ください。資金・採算に関する数値はあくまで一般的な目安であり、実際の収益を保証するものではありません。
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