犬が水をたくさん飲むのは病気のサイン?多飲多尿の目安と受診前に記録すること

犬の病気


最近、愛犬の水皿がすぐ空になる。おしっこの量や回数も増えた気がする。そんなとき、病気のサインなのか迷いますよね。この記事では、犬が水をたくさん飲むときの目安と、自宅での飲水量の測り方、受診前に記録しておきたいことを、獣医学の資料や動物病院の解説をもとに整理しました。

結論

結論から言うと、海外の獣医学資料では、1日の飲水量が体重1kgあたり100mLを超えると「多飲」の目安とされています。ただし個体差や環境で変わるため、あくまで目安です。

「前より明らかに増えた」と感じたら、まず24時間の飲水量を量り、体重や尿の様子と一緒に記録して、かかりつけの獣医師に相談しましょう。測れなくても受診は可能です。

水を自己判断で減らすのは避けてください。ぐったりしている、吐く、尿が出ないなどの様子があれば、すぐに動物病院へ連絡してください。

この記事でわかること

  • 犬が水をたくさん飲むときの量の目安(体重別)
  • 病気以外で飲水量が増える理由
  • 自宅でできる犬の飲水量の測り方
  • 受診前に記録しておきたい項目と記録表のひな形
  • すぐ動物病院に連絡したいサインと、考えられる病気

犬が水をたくさん飲むときの目安|多飲多尿の基準

世界小動物獣医師会(WSAVA)の学会講演録や米コーネル大学の解説では、健康な犬の飲水量は1日に体重1kgあたり約40〜60mLとされています。そして、100mLを超えると「多飲」の目安とされています。

同じ資料では、1日の尿量が体重1kgあたり50mLを超える状態を「多尿」の目安としています。体重別に計算すると、次のようになります。

体重 ふだんの目安(40〜60mL/kg) 多飲の目安(100mL/kg超)
5kg 約200〜300mL 500mL超
10kg 約400〜600mL 1,000mL超
20kg 約800〜1,200mL 2,000mL超

表は、編集部が上の数値から計算したものです。「ふだんの目安」以下なら正常、という意味ではありません。たとえば10kgなら、600〜1,000mLの間にあたる量もあります。また、WSAVAの講演録は、これらの数値が実験室で飼育された犬で定められたもので、家庭犬の「正常」を反映しないことがあり、ガイドラインとしてのみ使うよう述べています。

この数値は主に海外の資料によるものです。日本の公的機関や獣医学会による一般向けの基準は、執筆時点では見つけられませんでした。また、多飲の定義を「90〜100mL超」とする論文もあります。

100mL/kgがお皿から飲む水だけを指すのか、フードの水分を含めた量なのかも、確認した資料からは読み取れませんでした。そのため数字は「ひとつの物差し」として使ってください。

注意:健康な犬でも飲水量の幅は大きいという報告があります。ふだんあまり飲まない犬では、100mL/kg未満でも多飲にあたることがあるとされています。目安を下回っていても「前より増えた」と感じたら、獣医師に相談してください。

水を飲む量が増えた理由は病気だけではありません

犬の飲水量は、病気以外の理由でも変わると言われています。獣医学の資料や動物病院の解説では、次のような要因が挙げられています。

  • 暑い日や、激しい運動のあと
  • ウェットフードからドライフードへの切り替え
  • 冬の暖房や床暖房による乾燥
  • ストレスや痛み
  • ステロイドや利尿薬など、飲んでいる薬の影響

フードの水分量は大きく違います。ロイヤルカナンの解説では、ドライフードは水分約8%、ウェットフードは約75%とされています。ドライ中心だと、お皿から飲む量は増えやすくなります。

ただし、思い当たる理由があっても、増えた状態が続くときや目安を超えるときは相談をおすすめします。薬を飲んでいる場合も、自己判断で中止や変更をせず、処方した獣医師に伝えてください。暑さ対策については犬の夏バテ・暑さ対策でまとめています。

犬の飲水量の測り方|24時間の差し引きで記録

動物病院の解説を参考に、自宅でできる測り方をまとめました。

  1. 計量カップで量った水を、ペットボトルなどに用意する
  2. そこから水皿に注ぎ、足した量もすべてメモする
  3. 24時間後に、水皿とボトルの残りを量る
  4. 「入れた量の合計−残りの量」を、その日の飲水量として記録する

獣医学の資料では、受診前に数日間、自宅で測ってみることが勧められています。日によって差があるため、何日か続けると変化がつかみやすくなります。

多頭飼いで水皿を共有していると、1頭ずつ測るのは難しいとされています。その場合は共有していることをそのまま獣医師に伝えましょう。フードに水を足している場合や、散歩中に飲んだ水も、わかる範囲でメモしておくと役立ちます。

尿の量は、使用後のペットシーツの重さで目安をつける方法も紹介されています。屋外で排尿する犬は尿量を測りにくいため、飲水量の記録で十分とする解説もあります。ふだんの水飲み環境の整え方は犬の水飲み管理と水分補給も参考にしてください。

ポイント:動物病院の解説では、正確に測れていなくても受診はできるとされています。測ることを理由に受診を遅らせないようにしましょう。

受診前に記録すること|記録表のひな形

動物病院の解説では、受診時に次のような情報を伝えると役立つとされています。

  • いつ頃から変化に気づいたか
  • 体重と、おおよその1日の飲水量
  • 尿の量と回数、1回の量、排尿時の様子、お漏らしの有無
  • 食欲や体重の変化、嘔吐、皮膚や被毛の変化
  • 食事の変更、使っている薬
  • 女の子の場合は、避妊手術の有無と直近の発情の時期

「1回の尿量が増えた」のか「少量ずつ何度も出る」のかで、考えられる原因が異なるとされています。トイレの様子もよく見ておきましょう。

上の項目をもとに、当サイト編集部で記録表のひな形を作りました。獣医師が作成したものではないため、病院から指示があればそちらを優先してください。

日付 飲水量(mL) 体重(kg) 尿の回数・量の印象 食欲・元気 食事・薬・気温や運動
例)11/1 350 6.2 7回・シーツのかたまりが大きい ふつう ドライ・薬なし・散歩30分

なお、上の表の記入例の数値は架空のものです。尿を持参すると診断に役立つことがあるとされています。採尿の方法や容器は、事前に病院へ確認しておくと安心です。排尿の様子をスマホで撮っておくのも、編集部としてはおすすめです。

水を自己判断で減らすのはやめましょう

尿が増えて困ると、水を減らしたくなるかもしれません。しかし複数の動物病院の解説で、多飲多尿が疑われるときに自宅で水を制限しないよう注意されています。脱水を招き、状態を悪くするおそれがあるためです。

獣医師から個別の指示がない限り、いつでも新鮮な水を飲める状態にしておきましょう。

受診・相談の目安と、すぐ連絡したいサイン

一時的ではない多飲多尿は、様子を見続けずに早めに受診するよう勧める解説があります。「続く」と判断する日数について、統一された基準は確認した資料では見つかりませんでした。ほかに症状がなくても相談するよう勧める病院の解説もあります。目安を超えている、または前より増えたと感じたら、かかりつけの獣医師に相談しましょう。体重が減っている、元気や食欲が変わったなどの変化を伴う場合も、早めの受診が勧められています。

次のような様子があるときは、記録がそろっていなくても、すぐに動物病院へ連絡してください。なお、このリストに当てはまらなくても、心配なときは受診・相談して構いません。

  • ぐったりしている、立てない
  • 嘔吐をくり返す、水を飲んでも吐く
  • 食欲が大きく落ちている
  • 呼吸が苦しそう、意識がはっきりしない
  • 排尿の姿勢をくり返すのに、尿がほとんど、またはまったく出ない

夜間や休日に備えて、連絡先を確認しておくと安心です。動物病院の選び方と夜間救急の使い方も参考にしてください。

多飲多尿で考えられる主な病気(一般的な情報)

多飲多尿の原因として、獣医学の資料や動物病院の解説では次のような病気が挙げられています。どれにあたるかは症状だけではわからず、検査が必要です。ここでは一般的な情報として紹介します。

  • 慢性腎臓病:尿を濃くできず、尿と飲水が増えることがあるとされます。初期は目立つ症状が出にくく、水をよく飲むことが最初に気づくサインのこともあると言われています。
  • 糖尿病:尿に糖が出ることで水分も失われ、飲水量が増えるとされます。食べているのに体重が減る、といった変化が挙げられています。
  • クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症):獣医学の資料で、多尿・多飲が症状のひとつに挙げられています。
  • 子宮蓄膿症:避妊手術をしていない女の子で多いとされる病気です。元気や食欲の低下、嘔吐、発熱、お腹の張りを伴うことがあり、命に関わる緊急性の高い病気とされています。
  • 薬の影響:ステロイドや利尿薬などで飲水量が増えることがあるとされています。
  • そのほか:尿路感染症、肝臓の病気、高カルシウム血症、尿崩症、アジソン病なども原因として挙げられています。

病院では、尿検査や血液検査、超音波検査、ホルモンの検査などを組み合わせて原因を調べることが多いと紹介されています。どの検査が必要かは、獣医師が判断します。尿のトラブル全般については犬の泌尿器病の症状と予防でも解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 老犬が水をよく飲むのは、年齢のせいですか?

A. 年齢のせいと考えて様子を見る飼い主さんが多い、と指摘する動物病院の解説があります。高齢で多飲多尿がある場合、病気が隠れていることもあるとされています。「年だから」と決めつけず、記録をつけて獣医師に相談してください。

Q. 目安の量を超えていなければ、受診しなくていいですか?

A. 目安は個体差が大きく、ふだんあまり飲まない犬では目安未満でも多飲にあたることがあるとされています。前より増えた、尿が増えたと感じたら、量にかかわらず相談してみてください。

Q. フードをドライに変えてから水をよく飲みます。病気ですか?

A. ウェットからドライへの切り替えで飲水量が増えることはあるとされています。ただし、それだけが理由かは自宅では判断できません。増えた状態が続くときは、食事を変えた時期も含めて獣医師に伝えてください。

Q. 逆に、水をあまり飲まないときはどうすればいいですか?

A. 飲まなすぎる場合も注意が必要です。犬がお水を飲まない原因と対策で詳しくまとめています。

参考文献

免責事項

本記事は獣医療行為に代わるものではなく、病気の診断や治療方針を示すものではありません。愛犬の飲水量や尿の変化が気になるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。

本記事の数値は主に海外の獣医学資料による目安で、個体差や環境、食事内容によって異なります。記録表のひな形は当サイト編集部が作成したもので、獣医師の監修を受けたものではありません。情報は執筆時点のもので、今後の研究により変わる可能性があります。

ぐったりしている、嘔吐をくり返す、尿が出ないなど緊急性のある様子が見られる場合は、本記事を読むより先に、ただちに動物病院へ連絡してください。

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